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» 2017年06月30日 11時56分 UPDATE

首長は「殺せ、殺せ」と言っている:フィリピン麻薬戦争1年、死者数千人でも見えない勝利 (1/2)

フィリピンのドゥテルテ大統領による苛酷な麻薬撲滅戦争が開始されて1年、死者数は数千人に上る。

[ロイター]
photo 6月25日、フィリピンのドゥテルテ大統領による苛酷な麻薬撲滅戦争が開始されて1年、死者数は数千人に上る。写真は5月、首都マニラの空港で会見する同大統領(2017年 ロイター/Erik De Castroe)
photo 6月25日、フィリピンのドゥテルテ大統領による苛酷な麻薬撲滅戦争が開始されて1年、死者数は数千人に上る。写真はマニラ首都圏で18日、マニラの桟橋に近い、粗末な住宅の集まるナボタス漁港で殺害された夫婦の写真を前に灯されたろうそく(2017年 ロイター/Dondi Tawatao)

[マニラ 25日 ロイター] - フィリピンのドゥテルテ大統領による苛酷な麻薬撲滅戦争が開始されて1年、死者数は数千人に上る。しかしその一方で、マニラでの麻薬の末端価格は下落。世論調査でも、国民は犯罪に対してこれまで同様に不安を抱いているという結果が出ている。

ドゥテルテ氏は昨年6月30日、大統領に就任。その際に「社会的疫病の症状」である麻薬乱用と無法状態に終止符を打つと宣言した。

政府当局者は、同大統領の取締り作戦のおかげで、犯罪発生件数は低下し、数千人の麻薬密売業者を収監、麻薬常用者100万人が要治療者として登録されたと指摘。フィリピンの将来世代は麻薬禍から守られると胸を張った。

「数千人の死者が出ているのは確かだ」とマニラ首都圏警察のオスカー・アルバヤルデ署長は、ロイターの取材に語った。「しかし、ここには生きている人間が何百万人もいる、そうだろう」

しかし、人権活動家や弁護士、そして国内で大きな影響力を持つカトリック教会などからの批判はますます高まっており、当局が主張する成功に対して異論を唱えている。

こうした懐疑派は、警察が正規手続きを踏まずに麻薬犯罪容疑者を射殺しているのに何ら罰せられることなく、貧困層のコミュニティを恐怖に陥れ、克服すべき無法状態をさらに悪化させている、と主張する。

「(ドゥテルテ)大統領は自分が法律よりも上位にいるかのように、自分自身が法律であるかのように振る舞っている」。率直さで知られるフィリピン人神父のアマド・ピカルダル氏は、フィリピン・カトリック司教会議の出版物に最近寄稿した記事でそう批判した。「彼は法の支配と人権を無視している」

「麻薬撲滅戦争」に伴う正確な犠牲者数は激しい議論の的となっている。警察は、麻薬に関連した殺害や、警察の作戦中に射殺された容疑者は5000人と見ているが、懐疑派によれば、犠牲者数はこれを大幅に上回っているという。

大統領による容赦のないやり方を批判する人々は、犠牲者の大半は小物の麻薬常用者や密売人であり、大きなうまみのある麻薬ビジネスの背後にいる黒幕はほとんど知られておらず、逮捕されてもいないと指摘する。

もし「麻薬戦争」が成功しているのであれば、経済原則により、依存性の高い結晶メタンフェタミン、いわゆる「シャブ」の末端価格は、供給減少により上昇するはずだが、フィリピン麻薬取締庁のデータでも、マニラにおける「シャブ」の価格はさらに低下している。

麻薬取締庁によれば、2016年7月にはグラムあたり1200─11000ペソ(約2700─2万4500円)で売られていた「シャブ」の価格が、先月は1000─15000ペソ(約2200─3万3400円)だったという。

価格に大きな幅があるのは、出回る量の変動と大きな地域差を反映しているためだ。当局者によれば、マニラにおける末端価格はこの価格帯の最安値だという。そして、わずかだが最安値は下落している。

「価格が下落しているならば、それは法執行機関の行動が効果的でなかったことを示している」と語るのは、麻薬問題を専門とするグローバルな非政府組織、国際薬物政策コンソーシアムのグロリア・レイ氏。

フィリピン麻薬取締庁の広報官デリック・キャリオン氏によれば、問題は、国内の麻薬製造所9カ所に対する手入れがあったにもかかわらず、海外から密輸される「シャブ」により市場の需給ギャップが埋められてしまったことだという。

「麻薬密輸業者が健在なので、需要側に対処しなければならない」とキャリオン氏は言う。

首都マニラでは密輸された「シャブ」により価格が抑えられているが、当局のデータによれば、以前からかなり相場が高かった辺境地域では価格が上昇しているという。反体制勢力に都市を占拠された南部ミンダナオ島もその1つだ。

イスラム系武装組織「イスラム国(IS)」に触発された武装勢力によるマラウィ市襲撃の後、ドゥテルテ大統領は先月、ミンダナオ島に戒厳令を敷いた。陸軍が同市を迅速に奪還できなかったことで、ドゥテルテ大統領の掲げる「法と秩序」という看板には傷がついた。

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