次に、炎上するブラック企業は「マスコミ」だスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2017年07月04日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

長時間労働が当たり前のブラック業界

 まず、ひとつ目の共通点は「長時間労働が当たり前のブラック業界」ということだ。

 先日、東洋経済オンラインで、電通の新人女性の過労自殺事件を受けて、次の労基のターゲットが「メディア」となる可能性があり、日本経済新聞では「夜回り」の制限令を出したなんて記事が出たが、「報道」ほどブラックな仕事場はない。

 記者は追うべきものがある時は、朝も夜もなく動きまわる。「もう今日はあがる時間なんで」なんて言ってタイムカードを押して家に帰れる仕事ではないのだ。もちろん、それはADの「残酷物語」が漏れ伝わってくるテレビの制作現場も同様である。

 こういうところでかつて働いていた立場から言わせていただくと、宅配業界にも同じ匂いを感じる。宅配ドライバーたちの仕事は、「届けるべき荷物」がある限り終わらない。地獄のような「再配達千本ノック」で駆け回るドライバーの姿は、終わりのない特ダネ競争で夜討ち朝駆けを繰り返す記者は丸かぶりなのだ。

 宅配業界の盟主だったヤマトの未払い残業代が約230億円にものぼったことからも、いかにこの世界が「個人のがんばり」に依存していたかがうかがえるが、この構造はまんまマスコミ業界にあてはまるのだ。

 そんなシビアな労働環境にも関係しているが、2つ目の共通点は「現場が“限界”に近づいている」ことである。

 ネットの普及によって、新聞もテレビも従来のビジネスモデルが崩壊してきたことは、ここでいまさら説明する必要もないだろう。宅配業界もAmazon(アマゾン)に代表されるネット通販の急速な成長についていけず、これまでのやり方が通用しなくなっている。

 つまり、両業界とも「大きな変化」についていけていないのだ。

 時代についていけない「無理」はすべて現場に押し寄せる。いくらがんばっても、がんばっても、ゲームのルールが変わったのでこれまでのような成果がでない。しかし、かつて現場にいたおじさんたちは、「大きな変化」が起きていることさえ分からないので、「俺にできてなぜ最近の若者はできぬ」的な精神論を振りかざして成果を求める。結果、そのプレッシャーによって、現場で歯を食いしばって耐える人間の心が徐々にむしばまれていくという「負のスパイラル」に陥っているのだ。

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