トランプの暴言を止めることができない、お手上げの理由世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2017年07月06日 07時10分 公開
[山田敏弘ITmedia]

女性への発言が下品

 どう言うことなのか説明する前に、まずあまりに数多い失言のうち、女性に関するものをいくつか紹介したい。というのもトランプの暴言は、女性に対するものが特に下品で辛辣(しんらつ)だからだ。

 「ヒラリー・クリントンは旦那も満足させられないのに、米国を満足させられるわけがない」

 「(アカデミー賞女優の)メリル・ストリープはハリウッドで最も過大評価された女優で、私のことを知らないのに昨晩のゴールデングローブ賞で口撃してきた。大敗したヒラリー信者だ」

 「(ハフィントン・ポスト創設者の)アリアナ・ハフィントンは内面も外見も魅力的でない。なぜ元夫が男性とくっつくために彼女と別れたのか、よく分かるな。彼はいい選択をした」

 「(米女性コメディアンの)ロージー・オドネルの番組を俺が手がけていたら、彼女をクビにするな。あの太って醜い顔の目の前で、『お前はクビだ』と言ってやる」

 「私の『アプレンティス』(リアリティTV番組)に出演した女性はすべて、意識的にも無意識にも、私を誘惑してきた」

 「ケイト(英国のキャサリン妃)が裸で日光浴していたら誰だって写真を撮って大金を稼ごうとするよ」

 「(FOXニュースの女性キャスターに対して)彼女は目から血を流していた、いや他の場所からか」

 改めて言うが、トランプは世界一の大国である米国の大統領である。まず気になるのは、トランプがどうしてこうした常軌を逸した発言をしてしまうのか、という点だ。日本では、豊田真由子衆議院議員が秘書に対して車内で暴言(または暴行)を繰り返した音声が話題になっているが、どうすればああいう攻撃的な言葉が出てくるのか理解し難いのと同じである。

 トランプについては、いろいろ分析がなされているが、説得力があるのは、もともとの口の悪さに加えて、彼のひずんだ男尊女卑の感覚だろう。トランプは特に、世間で活躍している女性からの批判に耐えられないという指摘だ。米アトランティック誌は2017年6月、トランプの女性に対する暴言の背景は、1997年の大学教授らが調べた研究・論文で確認されていたと書いている。その研究によれば、「伝統的な女性の規範を守っている女性は“寛大な”女性差別を受け、伝統的な規範を脅かす女性は、“敵意ある”性差別を受ける」という。トランプはたいてい、それぞれの分野で活躍して発言力が強く、自分に批判的な女性に容赦ない誹謗中傷を行っており、これに当てはまるとの指摘はうなずける。

 そう考えると、2017年3月にドイツのアンゲラ・メルケル首相との共同記者会見で彼女からの握手の要請を頑として無視し続けたトランプの子どもじみた行動も理解できる。

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