これに対する会社側の回答も面白い。
「これまでにも同じようなご意見はあった」と前置きした上で「次期リニューアルのときに検討、議論したいが、急行系車両の色は現状のまま」と回答した。(2017年6月13日産経新聞)
これまでにもあったのか……。詳しい情報を探す。野球太郎というサイトによれば、株主総会にタイガースのユニホームを着たファン株主が現れる。タイガースが不調だと辛辣(しんらつ)なダメ出しが入り、監督やコーチの退任要求など人事まで言及するらしい。今年はタイガースが好調で、辛辣な意見は無かったという。しかし、上記のように電車の色にダメ出しが入った。
やり玉に挙がった車両は9300系電車と8000系電車だ。どちらも白い車体で、正面と側面の窓周りがオレンジ色である。9300系は2001年に登場した。8000系は当初、クリームと赤(バーミリオン)で塗装されていたが、02年からのリニューアルによって、順次9300系と同じオレンジに塗り替えられた。
もちろん、阪神電鉄に「ジャイアンツと同じ色」という意図はなかっただろう。もともと、阪神電鉄の電車の色は、各駅停車用がクリームと青、急行用はクリームと赤だった。塗装変更のきっかけは1995年の阪神淡路大震災だったという。各駅停車用の新型車両を導入するときに、青から水色を主体とした新塗装に変更した。沿線に明るいイメージを与えたと話題になった。ならば次は急行用電車も、というわけで、赤色の車両をより明るくするために、オレンジ色を採用した。
ちなみに、同じ急行用電車でも近鉄に直通する車両はイエローが採用されている。つまり、阪神電鉄の車体の色は3種類になった。電車の色を明るく、沿線の雰囲気を明るく、と配慮した結果、ジャイアンツ色になってしまった。
興味深い点は、この男性株主だ。電車の色を変えるとなると、それなりのコストが発生する。つまり、余分な費用を会社に負担させようとしている。コストが増えれば利益も減るわけで、配当も減額になるかもしれない。株主の立場からすると、利益を上げて配当を増やしてほしいわけで、コストを増やせという提案は株主の本来の立場を逸脱している。
それでもこの株主は、ライバル球団の色の電車に乗りたくなかったのだ。彼が会社に求めたものは、利益ではなく、阪神タイガースの活躍だった。
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