AIの本格導入に先駆けて、16年12月から実証実験をスタート。どのようなことを行ったのだろうか。井上氏は「当社が保有する顧客データは既契約者以外も含めると約4000万件もあります。その一部をAIに投入して、例えば、提案日時や訪問日時、顧客の住所情報など、どのデータ項目の相関関係が高いのか、いろいろなデータを投げては何度も試しました」と振り返る。
そこでいくつか見えてきたことがある。1つが提案のタイミングだ。同社では年に1度、契約内容確認のために顧客を訪問する活動がある。従来はその活動と同時に新規提案を行っていたが、AIによるデータ分析の結果、実は確認時のタイミングではなく、そこから継続的に顧客とコミュニケーションをとり、3カ月後に提案すると成約に至りやすいということが分かった。
「今までは契約確認時に新たな提案も決めなくては駄目だという指示をしていました。けれども、その時点からの継続的なコンタクトこそが、顧客の満足度が高まるのだいうことが初めて分かりました。気付かなかった相関性が見えてきたのです」と渡部氏は強調する。
まだAIに投入できるデータは一部だが、今後その量や種類を増やしていけば、より精度が高いパターンを導き出すことができるはず――。こう確信して今年4月に本番環境での運用を始めた。
現時点でAI活用による驚くべき成果が表れているというわけではないものの、期待は大きい。「ソーシャルメディアやGPS(全地球測位システム)などから得られるデータもAIに入れて分析することで、さらに新しい気付きが生まれるのでは」と井上氏は意気込む。
今後も試行錯誤は続くが、日本生命は一歩ずつ新たな領域に進もうとしている。
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