だから世界的に「メディア不信」が広がっている世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2017年07月20日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

米メディアの信頼性はガタ落ち

 米国では、ドナルド・トランプ大統領が「フェイク(偽)ニュース」という言葉をTwitterで乱発し、就任後もずっとネットで拡散させている。その言葉を大手メディアも日常的に拾っており、トランプの思惑通りに、ネットを起点として「トランプVS. 既存メディア」の構図ができ上がっている。ここまで露骨な対立はトランプ以前の米国にはなかったことである。

 現在、トランプは記者会見を行わず、とにかくネットを介してメディアへの攻撃を繰り返している。その理由は、メディアに直接突っ込まれたり間違いを正されることなく、支持層にダイレクトにアピールするためだ。

 ちなみにトランプはメディアを「野党」のようなものだと呼び、批判している。ただメディア本来の役割は「権力監視」であることを考えると、トランプの主張はある意味で正しい。米国ジャーナリズムの基本は、「クリティカルシンキング(批評的な見方)」であり、メディアが、大統領をうんざりさせるほど厳しい目で政権を監視するのは、メディアのあるべき姿であり、存在意義でもある。

 では現在、米国民の目からみたメディアの評価はどうなのか。もともと米国では、ジャーナリストの社会的な“地位”は日本などと比べて高い。米国では、地方紙などで訓練を受けて経験と実績を積んでから、全国紙などにステップアップするのが通例で、そうした下積みを経て、ニュースや外交、安全保障など国家的なニュースを対象にして取材を行えるようになっていく。有能なベテランジャーナリストがいろんなキャリアを積んで集まる全国紙の記者ともなれば、世間から一目置かれる存在となる。

 ただネットの普及とトランプ政権の誕生もあり、様相は変わりつつある。米ハーバード大学と調査会社ハリスが行なった調査によると、全体の65%が既存の大手メディアにはフェイクニュースが溢れていると考えている。トランプの支持基盤である共和党員に至っては、80%が既存メディアはフェイクニュースだらけだと考えている。一方、ネットの情報はどうかと言うと、84%がネットの情報はどこまで信じればいいのかが分からないと答えている。

 また別の調査でも、メディア不信が数字になって現れている。調査会社ギャラップは、2016年、メディアを信頼できると答えた米国人はたったの32%で、この数は1997年の53%からかなり落ち込んでいると指摘している。

 こうしたメディア不信の理由のひとつには、メディアは「エリート」側にいると批判的に見るトランプ支持者の人たちの感情を、大統領がわざとあおっていることがある。つまり、トランプのツイートによるメディア批判が効いていると考えられる。そのせいで、今、米メディアの信頼性はガタ落ちになっているのである。

日本で、新聞の閲覧状況が減少している(出典:新聞通信調査会)

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