だから世界的に「メディア不信」が広がっている世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2017年07月20日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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かつてなく厳しい目にさらされている

 ここまで見てきたとおり、ネットの普及は、世界的にメディアの信用低下を助長しているようだ。また米国や英国の調査によると、メディアに不信感をもっているのは、特に若い世代が多い。というのも、若い世代はネットを年配者よりも活用している傾向にあるからだ。

 ネットをより使うことで、既存メディアだけに依存しなくなり、幅広い情報にアクセスでき、自分たちでそれを取捨選択できる。紙面の限られたスペースのせいで、すべての情報を掲載できない新聞などは明らかに不利で、削った情報を「恣意的な編集」と思われてしまうのは避けられない。信用されなくなるわけである。

 読売新聞が報じた前川前事務次官の「出会い系バー」記事が、現場の記者たちが言うように「上層部」の指示だったとすれば、読売巨人軍の黄金期も知らず、購読歴もない若者ならば、ネット上で読売新聞の評判などの情報を読んで、不信感を抱くかもしれない。そういう流れが積み重なれば、遠くない未来、つまり10年から20年ほど経って今の若者が中年になれば、同社の部数にどんな変化が起きるのかは、ここで言うまでもない。

 よくネットを使えば無料で情報が得られるために、新聞などの既存メディアは厳しい立場に追いやられているという話を聞く。もっともな意見だが、それ以上に、ネットの普及で、新聞社が掲載する記事の問題点が浮き彫りになり、その情報が広く知られるようになっている事実のほうが重大ではないだろうか。

 メディアはネットの時代に、いまだかつてなく厳しい目にさらされている。おそらく「上層部」は、ネットの本当の影響力をまだ理解していないのかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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