Uberのセクハラ騒動が、私たちに教えてくれたこと世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2017年08月03日 07時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

セクハラ問題はウーバーだけでなく

 セクハラ問題が取りざたされたのはウーバーだけではない。有名な米ベンチャーキャピタルの500 Startups(スタートアップス)の共同創業者であるデイブ・マクルーア氏が7月3日、セクハラを理由に辞職して大きく報じられた。マクルーアは、立場を利用して、売り込みに来る女性を口説くなど不適切な言動を繰り返していた。例えば、面談した女性にFacebookで「あなたを雇うべきか口説くべきか、迷っているんだ」という気持ち悪いメッセージを送っていたという。

 また米ベンチャーキャピタルであるBinary Capital(バイナリー・キャピタル)の投資家ジャスティン・カルドベック氏も、売り込みに来た女性6人に無理やり、不適切に言い寄った。フィットネス関係のスタートアップを立ち上げたあるアジア系米国人の女性は、カルドベック氏に「オレのことを魅力的感じるか」と聞かれたり、「キスをされて体をまさぐられた」ことを明らかにし、カリスマ投資家から投資をしてもらうために、「白人ではない女性企業家なら我慢せざるを得ないこと」と、その時は自分に言い聞かせたとメディアに語っている。言うまでもなく、こうしたセクハラ問題を受けてカルドベック氏は辞任に追いやられている。

 またグーグルの弁護士を務めていたこともある大物投資家クリス・サッカ氏もセクハラを指摘され、疑惑を事実と認めた上で謝罪した。実はシリコンバレーには隠れ被害者がたくさんいると見られているが、IT企業は就職時に守秘義務契約を結ぶために、声を上げられない人も少なくないとの指摘がある。こうした声が、この先も出てくるかもしれない。

 そもそもシリコンバレーでセクハラが横行するのはなぜなのか。ひとつには、現地特有の男性的な文化があると指摘されている。エリート大学で学んだ白人男性だけの排他的なつながりが潜在的に存在し、その上に、倫理的な配慮よりもビジネスの成功と成長継続を至上命令とする文化があるからだ。またカリスマのような経営者なども多く、彼らの影響力が強いからだとの見方もある。

 そもそもIT業界には男性が優位な雰囲気があると、Facebookのシェリル・サンドバーグCOOは13年、著書の中でおそらく初めてその問題を提起した。IT業界では当時から、業界内でセクハラ問題がくすぶっていたと言われている。またその一方で、米ヤフーの女性初のCEOだったマリッサ・メイヤー氏が女性を重用しているとして、男性社員から訴えられた珍しいケースもあったが、メイヤー氏の方針はそうした"空気"へのカウンターだったとも指摘されている。

シリコンバレーでセクハラが横行する背景(写真と本文は関係ありません)

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