弱過ぎる東京ヤクルトスワローズは「上」もボロボロ赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)

» 2017年08月17日 12時30分 公開
[臼北信行ITmedia]
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株主のフジHDも余裕がない

 まるでヤクルト球団の新体制は電車で言えば「鈍行」のようなノンビリ運転。「特急」に乗り換えたいところだが、何しろ速度の速い列車を走らせるだけのレールもやや脆弱(ぜいじゃく)だ。そのレールの役割を果たさなければならない企業こそ、20%の株を有してヤクルト球団を支えるフジ・メディア・ホールディングス(HD)である。言わずと知れたフジテレビを中核とする持ち株会社である。

 「その関係でヤクルト球団はフジテレビのバックアップを得られるようになっている。だがいかんせん深刻な視聴率低迷にあえいでいることから、ヤクルト球団を盛り上げられるような番組を制作する余裕がない。まだフジテレビが元気があったひと昔前ならば、それが可能だったのだが……。今となっては野球中継の数もグンと減らし、地上波ではなく傘下のCS局での放送をベースにしている。昔はヤクルト球団がフジテレビから地上波放送で1試合につき1億円強の放映権料を得ていたこともあったが、それと比較すれば今はもうすずめの涙といったところ」(フジHD関係者)。

 チームを支えるはずの「上」がこのような状態だから現場トップも当然疲弊し切っている。就任3年目の真中満監督は連日、スタンドのヤクルトファンから「真中、辞めろ」と罵声を浴びせられ続けている。これだけ負けが込めば、確かにそれも仕方ない。

 ちなみに指揮官のスタイルは選手たちの自主性を重んじる「ソフト路線」が主体となっていることから、こうした低迷期においては「それが逆にネックとなってしまうのではないか」とも一部では指摘されている。2年前のリーグ優勝の時は就任したばかりの真中監督のやり方に目新しさを覚えた選手たちがうまい形で乗せられ、見事にペナントを制した。だが大低迷中の今シーズンから急に自身のスタイルを変え、事細かく選手に対してうるさくカミナリばかりを落とすようになるわけにもいかないだろう。現場での真中監督の悩みもかなり深いようだ。

 パ・リーグで同じく最下位に沈む千葉ロッテマリーンズは先日、伊東勤監督がチーム低迷の責任をとって今季限りで退任する意向であることを発表した。今季が3年契約の最終年でだんだんと立場的に追い詰められている真中監督の去就も注目される。

 「前オーナーの堀さんが真中監督の人間性をとにかく買っている。だからたとえチームがぶっちぎりの最下位でも、真中監督は来季続投のオファーが向けられるのではないか」(チーム関係者)。

 いずれにしてもヤクルトがこのまま何一つ球団改革に踏み切らなければ、今後もチームの暗黒時代は延々と続き、アリ地獄から抜け出せなくなってしまうだろう。手遅れの事態に陥る前に本社と球団で総力を結集し、強い東京ヤクルトスワローズを再建させてほしい。まだ間に合う。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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