このコラムで何度も述べたが、テレビはもともと大衆を扇動する「情報兵器」として開発され、第二次大戦後は政治や消費など、大衆の「行動」に影響を与えるメディアとして姿を変えた。その「効果」がバカにできないのは、自殺報道をシャワーのように毎日繰り返すと、それにつられて自殺者がグンと増えるというウェルテル効果からも明らかだ。
つまり、「女性蔑視CM」を見て育った者は、同じようなハラスメント繰り返す恐れがあるのだ。
「たかがネットのPR動画でそんなに目くじらをたてなくても」と笑う人もいるだろう。だが、「たかがCMでそこまで目くじらたてなくても」と笑っていた結果が、「今」である。
そろそろハラスメントの連鎖を断ち切るため、作り手も真剣な議論をする時期にさしかかっているのではないか。
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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