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» 2017年08月29日 11時00分 公開

そもそも現実的なの?:米ハーバード大教授がぶち上げた「1万円札廃止論」のナゼ (1/2)

米ハーバード大のケネス・ロゴフ教授(64)の著書『現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?』(日経BP、日本語版)が話題になっている。本の中で「1万円札の廃止」を訴えているが、日本人にとって1万円札は使い勝手がいいのに……。

[産経新聞]
産経新聞

 「まず1万円札の廃止を」――。米ハーバード大のケネス・ロゴフ教授(64)の著書「現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?」(日経BP、日本語版)は衝撃的なひと言から始まる。高額紙幣を廃止することで、(1)マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、収賄などの犯罪を抑止できる(2)マイナス金利政策の効果が大きくなる−などと主張する。日本人にとって1万円札は使い勝手がよく、これを廃止するのは現実的とはいえない。ただ、金融政策の“限界”にぶつかる日銀内でも話題に上るベストセラーになっている。

「1万円札廃止論」に現実味はあるのか

 ロゴフ氏は国際通貨基金(IMF)でチーフエコノミストを務めた経験もあるマクロ経済学のスペシャリストだ。ロゴフ氏は「現金の利便性を確保しつつ、地下経済に関与する企業や個人が大口の現金取引をおいそれとはできないようなシステムを設計する必要がある」と訴える。日本に対して、5〜7年程度かけて、1万円札のほか5000円札を廃止し、現金の少ない社会に移行することを提案している。

 ロゴフ氏が日本に着目した主な理由は、紙幣発行量の多さと1万円札の利用頻度の高さだ。2015年の主要国通貨流通量の対国内総生産(GDP)比率を見比べると、日本は18.61%と突出して高い。先進国では、米国も英国も10%に満たない水準だ。

 日本は通貨流通量に占める最高額紙幣の比率も高い。ロゴフ氏によると、2015年は日本は88%に対し、米国は78.4%、英国は18.5%にとどまった。

 日本では昨年、世の中に出回るお札の額が初めて100兆円を突破した。預金金利の低下で銀行にお金を預けておくメリットが薄れたことで、自宅で現金を保管する「たんす預金」が増えたもようだ。18年から預金口座に任意で紐付けする「マイナンバー制度」が始まることも、「税務当局に保有資産を捕捉されたくない」と考える個人による現金需要を押し上げたと見られている。

 海外では、マネロンなどの経済犯罪対策を目的に、高額紙幣を廃止する動きが相次いでいる。インドのモディ首相は昨年11月、1000ルピー札と500ルピー札の廃止を唐突に宣言。一時的に現金が大量に不足する事態に陥った一方で、電子決済の普及が拡大した効果もあった。

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