それでもイチローは帰国せず、「生涯メジャー」を貫く赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2017年08月31日 12時05分 公開
[臼北信行ITmedia]

イチローは構想外になるのか

 マーリンズのドン・マッティングリー監督が以前、そのイチローについて次のように評価していた。

 「彼はクラブハウスに到着した時から、チームメートたちの注目の的になっている。イチローがどういう風にユニホームへ着替えるのか。どうやってバットやグラブを手入れするのか。どのようにストレッチをするのか。グラウンドで練習をする時には、よく若い選手たちが彼を質問攻めにしているよ。

 それでもイチローは嫌な顔をすることもなく笑顔で丁寧に答えている。その彼の動きや一語一句が、選手たちにとって何物にも代えがたい宝物となるのは言うまでもない。プレーはもちろんのこと、グラウンド以外のところでもイチローの貢献度は高い。見えないところで彼はマーリンズに計り知れないプラスを生み出している」

 マーリンズのジェフリー・ローリア球団オーナーも指揮官同様にグラウンド内外でチームに貢献するイチローを高く評価しており、これで来季も安泰と考えたいところだったが8月上旬、その雲行きがガラリと変わることになった。同オーナーがニューヨーク・ヤンキース元キャプテンのデレク・ジーター氏と実業家のブルース・シャーマン氏を中心とするグループに球団を売却することで合意したと8月11日、米の複数メディアで報じられたのだ。

 このまま順調に事が運び、正式決定となれば、イチローの来季去就に影響が及ぶことは必至だ。イチローの2018年契約はオプションで球団に選択権があり、現体制のままならば契約延長が濃厚だったが、新体制になると前オーナーの意志は白紙化されてどうなるか分からなくなるからだ。

 米複数のメディアによれば、ジーター氏が編成トップに就任することは内定済み。そうなるとイチローの契約延長に関しても、必然的に編成トップのジーター氏にすべてが委ねられることになる。イチローとジーターはヤンキース時代に同僚でお互いをリスペクトし合っていた間柄。その流れを考えれば、ジーターはイチローの存在価値を誰よりも深く知る人物と言えそうだが、今度は経営側に立つことにより、ドラスティックな姿勢を全面に出して「チーム改革」の名の下にあえて非情な決断を下す可能性も十分ある。

 何せチームは1993年のチーム創設以来、ポストシーズン進出はわずか2回(いずれもワイルドカード)。1997年にワールドシリーズ制覇を成し遂げたものの、そのポストシーズン進出も2003年を最後にずっと遠ざかっている。ジーター氏が過去のすべてをリセットし、リニューアルしたつくりを目指すとすればイチローは構想から外されてしまうかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.