京都議定書以来、われわれは「地球温暖化は現に起こっており、その原因は温暖化ガスである」ということに疑義を挟むことがほぼできない状態にあった。筆者はかなり驚いたが、レポートの中でついに経産省が「気候科学の不確実性」という項目を設けてこの点を説明している。
「気候科学の不確実性のため、パリ協定で合意された2度目標のための温室効果ガス排出経路は、気候感度やリスクに対する考え方によって複数考えられる。科学的知見の限界に留意しつつリスク管理を的確に進めるため、削減目標は幅をもって解釈すべきである」という言葉からは血を吐くような切実さが滲む。彼らがストレートに言えないことを筆者が代弁すれば、「温室効果ガスの排出量と気温変化の関係は現在の科学的定説が本当に正しいのか?」、あるいはさらに踏み込んで、「地球温暖化は科学的に温室効果ガスの影響だと言い切れるのか?」ということだと思う。
最後に専門家に対して向けられたこれらレポートが国民向けのものになるとどうなるかをコンテンツ項目の並びを紹介して終わりにしよう。
1. 温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」
2. パリ協定が画期的といわれる2つのポイント
3. パリ協定発効のカギは公平性と実効性
4. 日本の削減目標とビジネスへの影響
5. 経済と両立しながら低排出型社会を目指す
きれいに毒気が抜かれて、正しい努力で美しい未来がやって来ることになっている。こんな説明をしている限り、いつまで経っても本質的議論に至るはずがない。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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