中国版フィンテック、平安保険の戦略4億人の金融ビッグデータ(2/4 ページ)

» 2017年09月06日 06時30分 公開
[片山ゆきニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

 平安保険グループの保険商品など金融商品を実際に契約したり、銀行などを利用している個人顧客は1億3107万人、ネット利用を含め同社のサービスを利用する顧客総数は3億8000万人に達している(サービス利用の重複分を除く)。これら個人の属性に関する情報、決済、信用情報、投資、保有する金融資産、受診などの健康情報、保有している不動産などおよそ4億人の金融に関するビッグデータが平安保険に集まっているのだ。

 特に、陸金所のP2Pについては、平安保険の高い信用を背景に、少額貸付の個人顧客に加えて、それよりも大きな金額を中小法人にも融資している点に特徴がある。16年末時点で、個人向けの取引額は、前年の2.4倍にあたる1兆5352億元(約26兆円)、中小法人向けは前年の5倍にあたる4兆2000億元(約71兆円)と大幅に増加した。16年末時点の個人顧客向けの融資残高は前年のおよそ2倍にあたる4384億元で、これは、同年のP2P市場全体の残高(8162億元)のおよそ半分にあたる規模だ。このP2Pによる平安保険の収入は、融資が成立した際の仲介手数料である。

 16年末の陸金所の登録ユーザー数の累計は2838万人、そのうちアクティブユーザー数が740万人と、ユーザー数、上掲の取引量とも中国最大規模である。平安保険、陸金所には、借り手の信用状況、身元証明、資金希望額や使途、貸し手の資金状況など、個人のみならず、中小法人の動向を中心とした金融に関する多くのアクティブな情報がどの金融機関よりも集まることになる。

 中国のP2Pは、既存の金融機関で個人の小口の借り入が難しく、さらには若年層を中心とした旺盛な消費を背景に利用が進んでいる。また、平均の貸付利率がおよそ10%と、銀行の1年定期の金利1.5%と比べるとはるかに高く、平均の借入期間が10カ月未満と、リスクは高いものの短期で高利回りの運用手段として、一気に広がった(※16年中国網絡借貸行業年報)。同時に、詐欺や不正といった問題も多発しており、16年以降は当局の規制によって業界の再編が進みつつある。16年の市場は前年の2倍の規模に成長するなど、その勢いはさらに増しつつある。

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