インタビュー
» 2017年09月14日 06時30分 公開

成果着実に:社内にイノベーションの風土を JALの若手が働き掛け

日本航空(JAL)の若手社員が中心となって取り組む「イノベーションラボ」とは一体どのようなものだろうか?

[伏見学,ITmedia]

 日本航空(JAL)が本格的なビジネス変革に取り組み出した。2017年6月1日付で「デジタルイノベーション推進部」を新設。ITなどの先進技術を活用してさらなる事業成長を図ることが狙いで、非常勤執行役員として世界的に著名なIT専門家の斎藤ウィリアム浩幸氏を招へいした。

 これに先駆けて、同社が立ち上げたのが「イノベーションラボ」だ。16年4月にITイノベーション推進グループを発足し、そこが主体となってイノベーションを起こすための“種”をまいていく。

 「社内で新しいことを生み出すような人材や風土をいかに醸成していくかがイノベーションラボのミッションです」とIT企画本部 IT推進企画部 ITイノベーション推進グループの下川朋美主任は話す。

 取り組みとしては、メーカーのようにまったく新しいものを発明するのではなく、既に存在する技術や考え方を自社のサービスや業務と掛け合わせることで、JALなりの価値やインパクトを出していくことを目指す。また、活動の最初の段階としては、具体的なアウトプットを重視するというよりも、さまざまな業務に携わるメンバーが組織を横断して集まり、さらには社外の企業などともコラボレーションしながら自由な発想を出し合うことに重きを置く。

JALのWebサイトには「イノベーション」に関する取り組みが紹介されている JALのWebサイトには「イノベーション」に関する取り組みが紹介されている

クラフトビールで社員を活性化

 そうした目的の下、30歳前後の若手社員を中心に、パイロットやCA(客室乗務員)、本社スタッフなどさまざまな部門から約30人のメンバーが集まった。それを複数のチームに分けて活動をスタートした。

 「JALは現場で地道にオペレーションする会社で、イノベーションがいきなり出てくるものではありません。ですので、実証実験でもいいから、まずは始めてみることが大切だと考えました」(下川氏)

 チームは、車いすの顧客が旅行をもっと快適にできること、働くお母さんのための家族旅行準備サポート、乗客同士が機内でストレスフリーな時間を送れることのほか、VR(仮想現実)を活用したマーケティング施策、JAL社員の活性化というテーマを設定し、5チームに分類した。

 例えば、車いす顧客へのサポートを考えるチームは、手荷物の搬送に注目。車いすに座ると両手がふさがってしまうため、手荷物を持つことができず、それを運ぶスタッフないし同行者が必要になる。「お手伝いは必要だけど、そこまで手厚いサポートは不要だというお客さまもいらっしゃいます。気を遣わずもっと気楽に旅行したいという声は少なくありません」と下川氏は説明する。

手荷物搬送支援のロボット 手荷物搬送支援のロボット

 そうした要望に応えるため、ロボットを活用した手荷物搬送支援の実証実験を福岡空港の国内線ターミナルで実施。車いすの顧客が荷物をロボットに載せ、そのロボットが車いすに追従しながら目的地まで荷物を運ぶという仕組みで、これにより顧客の安全性確保と負荷軽減を実現するという。なお、使うロボットはオムロンの「LDシリーズ」で、人や障害物を検知し、ぶつからない進路を自ら選んで進むのが特徴である。

 JAL社員を活性化するというチームの取り組みもユニークだ。社員自身がワクワクしないと会社は元気にならない、どうすれば社員はワクワクするのだろうか――このテーマに対し同チームは、誰しも潜在的に好きなものがあって、それを核につながれば皆が高揚し、一体感が生まれると考えた。

 その核になるものとして選んだのが「クラフトビール」だ。社内報などを通じてクラフトビール好きの社員を数十人集め、クラフトビール大手のヤッホーブルーイングとコラボしたイベントを複数回開催。同じ会社に勤めているとはいえ、JALは本体だけでも1万人を超える大企業で、顔を見たことすらない社員も多いだろう。しかし、共通の嗜好(しこう)があれば、参加者は自然と交流を図り、会社のことについても気兼ねなく話し合えるはずだと見た。また、ヤッホーブルーイングも活気ある職場作りに力を入れているため、同社の社員ともコミュニケーションをとることでヒントを得るという狙いもあったという。

ヤッホーブルーイングとのコラボイベントの様子 ヤッホーブルーイングとのコラボイベントの様子

 イノベーションラボは1年間の活動の後、経営陣に取り組み状況と成果をプレゼンテーションし、そこで役員が各チームにコミットメントしてくれることを取り付けたという。これによって全社を挙げた継続的なイノベーションの推進が可能になったのだ。

 「まだ社内での認知度は低いのですが、今後はより多くの社員を巻き込んでいきたいです」と下川氏は意気込んだ。

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