「どんな状況でも楽しい仕事を」――バンダイで記録的ヒット商品を生み出した誉田氏の思想【後編】

カプセルトイの世界において、まれに見る大ヒット商品となったバンダイの「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」。この仕掛け人である同社ベンダー事業部 企画・開発第一チームの誉田恒之氏が開発秘話を語った。

» 2017年09月25日 10時00分 公開
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 カプセルトイの世界において、近年まれに見る大ヒット商品となったバンダイの「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」。この仕掛け人である同社ベンダー事業部 企画・開発第一チーム アシスタントマネジャーの誉田恒之氏が、なぜこの商品を開発するに至ったのか、その背景などについて前編で紹介した。

 ザクヘッドの商品化に当たって、この斬新なアイデアだけでなく、厳密なコスト管理まで非の打ちどころがなかったものの、肝心の商品開発の段階において誉田氏は大きな壁にぶち当たるのだ。

「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」の第2弾商品 (C)創通・サンライズ 「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」の第2弾商品 (C)創通・サンライズ

妥協した仕事は人々の心を動かせない

 ザクヘッドはプラスチックのカプセルを使わない商品であるため、他のカプセルトイよりも本体サイズを大きくできるのが特徴である。その分パーツの種類も多くできるのだが、それらを1つの球体の中に収納するのに苦労したという。

 当初は16年11月に発売予定だったので、同年6月には最終的な仕様がまとまっていなければいけなかったが、その時点でまだすべてのパーツを詰めて丸い形にすることはできていなかった。その後も何度か設計からやり直し、3カ月半後ろ倒しの17年2月に発売となったのだ。

 「どんな仕事でもそうでしょうが、納期を守るのは重要で、そう簡単に発売日をずらすわけにはいきません。平身低頭で上長に詫びつつ、肩身の狭い思いをしながらも、とにかく何とかしてこの企画を実現させるために日夜努力するしかありませんでした」と誉田氏は振り返る。

 3カ月も発売日を延期した商品はバンダイでも珍しいケースだが、一方で、これまでにない画期的な商品であるからこそ、こうしたリスクも覚悟の上だったのかもしれない。実際、誉田氏は商品に対する妥協なきこだわりがあった。仮に商品のサイズを10〜20%小さくすれば納期通り開発を進めることができたのだが、そうすると自分自身が意図していた驚きのあるサイズ感が損なわれてしまうので、ここは絶対に譲れなかった。

発売してみないと分からないのがおもちゃ

 また、おもちゃはいざ発売してみないと、売れるかどうか分からないというタイプの商品であることも、誉田氏はもとより、上層部も理解していたことも無関係ではあるまい。

 「これまでのヒット商品も、企画の段階では誰もが売れないと思っていたが、それを担当者が熱意でごり押しして商品化した結果、実を結んだケースは少なくありません。何でもかんでも企画が通ることはありませんが、担当者の情熱に加えて、ある程度のリスクが想定できるのであれば、ぜひ挑戦してみようという社風がバンダイにはあります」

 例えば、「たまごっち」は、そうした状況からスタートし、爆発的なヒットにつながった商品であるという。

 誉田氏自身が香港時代に部門の垣根を超えて初めて提案した「アンパンマントレイン」もそれに該当する。これはアンパンマンの各キャラクターがカプセルに入って売られている商品で、アンパンマンたちが乗っている車体を押すと人形が動くギミックがあり単体でも遊べるが、キャラクター同士を連結し、さらにぜんまいの付いた先頭車両を組み合わせることで、1台の電車になってすべてのキャラクターがゼンマイ車に牽引されて動き出すというアイデアを掛け合わせたものだ。当時からアンパンマン関連商品は人気だったが、キーチェーンやスタンプなどコレクションするものがほとんどで、カプセル同士が連動して遊べるアイテムはなかった。しかし、「カプセルトイの歴史を変えてやると本気で思った」という誉田氏の言葉通り、発売後すぐに過去最高の売り上げ数字を達成し、歴史的なヒットにつながった。その後、15年以上継続するロングセラーとなった。

「アンパンマントレイン」 (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV 「アンパンマントレイン」 (C)やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV

どんな状況でも楽しい仕事をやろう

 このように、自分自身の企画やアイデアを具現化するために日々積極的に行動し、その結果、大ヒットという具体的な成果を幾度となく上げてきた誉田氏は、どのように部下をマネジメントしているのだろうか。

 誉田氏がチームメンバーに対して常に伝えているのが、「どんな状況でも楽しい仕事をやろう」ということだ。おもちゃ作りという仕事は、外から見ると面白そうに映るが、実際には他の仕事と同じように事務作業やルーチンワークなど、やらなくてはならない業務も多い。そうしたときに「どうやって心を切り替えるか」が大切なのだという。

バンダイ ベンダー事業部 企画・開発第一チーム アシスタントマネジャーの誉田恒之氏 バンダイ ベンダー事業部 企画・開発第一チーム アシスタントマネジャーの誉田恒之氏

 「最近の若い人たちは真面目なので、どうしてもやらなければいけない業務ばかりに集中して多くの時間をとられ、結果、本当にやりたい仕事に手が回らないというケースが散見されます。大変かもしれないが、そうした状況のときこそ楽しい仕事を見つけてバランスを保つことが重要なのです」

 少しでも楽しい仕事があれば、煩わしいと思うような付随業務も乗り切れる。そして徐々に楽しい仕事の比率を増やしていけば、いつの間にかやらなくてはいけない業務も楽しくなっているかもしれない。自らの体験から誉田氏はそう考えているのだ。

 誉田氏は、おもちゃ作りにおいて経験や知識が有利になる場面は多々あるが、最も良い商品を作れるのは、人を喜ばせることが好きで、仕事を楽しんでいる人なのだという。

 「もしも商品企画が好きならば、どこに配属されていようと、どんどん企画を提案すればいいと思います。やらされ仕事になって辛い仕事に努力するなら、同時に自分が本当にやりたいものを見つけることに努力すべき。見つけられれば、それに挑戦すればいいのです」

 好きこそものの上手なれ――。誉田氏の根っこにあるこの理念は、おもちゃ作りに限らず、さまざまな仕事に通じることは間違いない。そして、楽しんで仕事に打ち込むビジネスパーソンこそが、組織を大きく動かし、世の中をあっと言わせるようなビジネス変革を起こすのだろう。

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