連載
» 2017年09月28日 07時00分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:ボイコット危機の平昌五輪で韓国が恐れる本当の“敵”とは (3/4)

[山田敏弘,ITmedia]

懸念は北朝鮮情勢だけではない

 そもそも北朝鮮情勢を見ると、グアムへのミサイル発射も、太平洋での水爆実験も、米本土攻撃という主張も、現実に起きる可能性は低い。全ては金政権維持のための瀬戸際外交で、金政権は米国から軍事攻撃を受けないギリギリのところを周到に計算して挑発行為を行っている。北朝鮮が本気で「敵」である日米韓に打撃を与えたいなら、大会直前にでも、平昌にミサイルを撃ち込むなどすれば大混乱を起こせる。だがその後で国際社会から受ける(軍事的)報復を考えれば、もちろんそんなことをしようとは考えないだろう。つまり、現実的には平昌が「危ない」とは言えそうにない。

 だがそれでも、五輪会場が北朝鮮から80キロしか離れていない事実を「気持ち悪い」と思う人たちが少なくないのも理解できる。

 五輪という意味では、前回も似たような懸念はあった。2014年にロシアのソチで行われた冬季五輪の際も、過激派のテロなどが懸念されており、大会前から騒ぎになっていた。自爆テロ犯がソチで目撃されたというニュースもあったくらいだ。ただ結局は何も起きなかった。

 いずれにせよ、北朝鮮の動きによって平昌五輪を巡って懸念が高まっているのは確かである。ただ実のところ、平昌五輪は北朝鮮情勢以前からさまざまな問題に苛まれていた。

 例えば、予算の問題。五輪の予算は当初の予定から50%ほど増え、12兆8485億ウォン(約1兆2000億円)ほどになる。韓国紙の中央日報は、「この予算には五輪後に平昌と江原道一帯を国際的な観光地として活用するための総合計画は含まれていない」と報じ、「五輪の呪い」になると指摘しているくらいだ。

 また会場や設備の準備も問題になっていた。会場のために伐採された加里王山の山林が生態系に悪影響を与えると反対運動が起きてミソがついた。最近になってようやくめどがついたといわれている会場や施設、交通機関では、予算などの影響で開会式・閉会式会場の観客席に屋根が付けられないといった批判も出ている。氷点下となる極寒の中では過酷な観戦環境である。

photo 予算や会場、設備の問題もある(平昌五輪のエンブレム)

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

ITmedia 総力特集