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» 2017年09月28日 07時00分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:ボイコット危機の平昌五輪で韓国が恐れる本当の“敵”とは (4/4)

[山田敏弘,ITmedia]
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「犬食文化」へのネガティブ・キャンペーン

 さらには、フランスやオーストリアなどの発言よりも過激なボイコット・キャンペーンも行われている。国際的に批判されることが多い、韓国の「犬食文化」に絡んだもので、インターネット上で大々的に「韓国の2018年平昌五輪をボイコットする!」という署名活動が続けられている。

 もともとこの署名活動は米カリフォルニア州の「koreandogs.org」というサイトが立ち上げ、最終的に韓国政府とIOCに署名を送ることが目的のようだ。署名のサイトには、「韓国は世界で14番目の経済国なのに、毎年250万頭という犬や、何千という猫が食用として処理され、『健康食』として食されている」とし、「犬の多くは加虐的に極度の恐怖を経験させられ、殺される前に苦しむ。猫は多くの場合、リウマチに効くと信じられている強壮剤を作るために生きたまま煮られている。韓国での需要が高すぎるために、犬肉の20%は中国から輸入されている」という。

 そして9月末の時点で、21万3548人もの署名が集まっている。

 確かに犬を食肉処理するのは残酷に感じられるが、他国の文化を外の人間が自分たちの価値観のみで糾弾するのはいかがなものか、という意見があるのも分かる。もちろん先進国では犬はかわいいペットだが、途上国などで野生の犬に遭遇すると、他の獣と変わらないことが分かる。そんな国に暮らす人たちから見れば、犬は人に牙を向けかねない危険な生き物である。実際に最近、インド発のニュースで、小さな子どもたちが野良犬に取り囲まれて危機一髪で逃げる映像がニュースで話題になっていたが、下手したら、逆に食われてしまいかねない。

 さすがに犬食文化が批判されて五輪が中止になることはないが、五輪をビジネスチャンスと捉え、多くの雇用を生みながらスポーツの祭典のためにギリギリで懸命に準備を進める韓国の人たちとしては、面白くないネガティブ・キャンペーンだろう。

 北朝鮮はさすがに五輪をミサイルで標的にはしないだろう。一方の犬食批判キャンペーンは五輪開催の韓国に打撃を与えることになる。韓国にとって本当に怖いのは、「口撃」のみで「攻撃」しない金正恩より、韓国の文化をおとしめようと「吠える」ネガティブ・キャンペーンの方かもしれない。

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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