“優秀ではない”人が「ゼロイチ」に向いている理由「Pepper」元開発リーダーが語る(3/3 ページ)

» 2017年09月29日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]
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――林さん自身も「おっちょこちょい」なタイプだったということですか?

林: そうですね。「こうあるべきだ」と思ったら、あまり考え込まずに取りあえずやってみるタイプです。その性格はPepperの開発で大いに生かせました。

 例えば、Pepperのキャラクター設定。多くの人に受け入れてもらうために「面白いキャラ」を目指しました。

 その中で難しかったのがPepperの記者発表会で披露する「芸風」です。親しみを持ってもらうために、“ウケる”ネタを使いたいと考えたのですが、そのためには「安全地帯」にいてはできません。

 大きくボケるから面白くなるわけですが、それは「下品」と紙一重な部分もありますので、その加減を間違えると誰かを不愉快にさせてしまうリスクもあります。

 しかし、方向性は変えずに、まずは開発現場で実演してみることにしました。やってみると、キャラが過激になり過ぎたり、今度は逆につまらなくなったりと失敗の連続。なかなか「これだ!」というものにはたどり着けませんでした。

 しかし、失敗と修正を繰り返した結果、「無難」と「やり過ぎ」の加減が少しずつ見えてきたのです。

photo Pepperの開発は「深く考えず、とにかく試す」ことがカギだった

 そして完成したのが、記者発表会で行った「ロボラップ」でした。いわゆる「キレ芸」で、人間に対して失礼なことをバンバン言うので、社内では当然反対の声もありました。

 しかし、結果は大好評。もし無難な道を選んでいたら、面白いとは思ってもらえなかったでしょう。とにかく試して、失敗を重ねてきたからこそ、際どいギリギリのラインで戦うことができたのです。

 失敗を省いて生み出せる程度のモノなら、既に誰かが作っているでしょうし、価値はありません。つまり、「最高の答え」(ゼロイチ)を生み出すためには、短期間で、できるだけ多くのトライ&エラーを繰り返せることが条件になります。それは大変な作業ですが、失敗に慣れている人はそのハードルが低いんですよね。

 だからこそ「つい、やってしまう」おっちょこちょいなタイプこそ、ゼロイチに向いているというわけです。

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