ミガキイチゴの着想はどのように生まれたのだろうか。「市場で何キログラム何円というように機械的に値段が付く農業のコモディティーから脱却したいという思いがありました」と岩佐さんは振り返る。そうした既存の仕組みから抜け出すとともに、今の消費者は「これを買ったら面白い」「ワクワクする」といった情緒的なものにお金を払う傾向にあり、そうした観点でイチゴという商品をブランディング、マーケティングしたのだ。もちろん、イチゴそのものが他よりもおいしいのは大前提である。
実は、冒頭で述べた1粒1000円の「ミガキイチゴ プラチナ」は商品全体の1%にも満たない。主力はそこまで高くない、家庭でも気軽に購入できるような商品である。「イチゴはあくまでも食べ物ですから、日ごろから買えるような価格でないと誰も買いません。1粒1000円の商品しかなければきっと駄目でしょう。ただ、商品ラインアップにそうした圧倒的な価値の高いものがあれば、ブランド全体を押し上げる効果があります。ミガキイチゴ プラチナは戦略的に出した商品なのです」と岩佐さんは説明する。
イチゴで山元町を元気にするという岩佐さんの思いは実を結びつつある。しかし、それだけでは終わらない。彼の視線は世界を向いているのだ。
日本のイチゴはほぼ国内市場でしか流通しておらず、海外展開が遅れている。加えて、海外勢の多くは1国1ブランドで商品展開しているのに対し、日本のイチゴは地域間競争が激しいため、海外のスーパーマーケットに並んだとしても、例えば「福岡の○○」「栃木の□□」などと自国の商品で棚を奪い合う状況になっているという。
「日本のマーケットはそれだけ大きいので、国内中心に考えると、そうならざるを得ないのは分かります。ただし、今後は海外に売れるイチゴを“オールジャパン”で作っていかないといけません」
そして山元町も、日本の産地の1つというよりも、世界の中のイチゴ産地としてどう生き残っていくか考えるべきだとする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング