「クルマを止めない」手助けを ブリヂストンのデジタル変革タイヤ使用をデジタルで効率化(2/3 ページ)

» 2017年10月16日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

鉱山に特化したソリューションを提供

 同社のデジタル変革は、3段階で進められている。まず、自社の生産現場にデジタル技術を取り入れ、生産性や品質を高めたモノづくりを実践。次に、運送業などの顧客向けにタイヤ管理ソリューションを開発し、提供。そして、その取り組みを産業全体に広げ、顧客企業と連携して集めた情報を、商品やサービスの開発に生かす仕組みを構築していく――。そのような広がりを描いている。

 タイヤの管理といっても、空気圧や温度の調整、交換時期の予測、在庫の適正化など、タイヤの状態をさまざまな観点で把握してコントロールする必要がある。顧客企業の業界や車両の使い方によって、管理の条件は大きく異なる。タイヤ管理の機能を盛り込んだシステムを開発するだけでなく、タイヤの製造現場や関連業界のオペレーションを含めたバリューチェーン全体をデジタル化することが求められるのだ。

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 ここでは、顧客向けのソリューションの事例を紹介する。鉱山車両用のタイヤ・ホイール管理ソフトウェア「TreadStat」だ。

 鉱山や大規模な建設現場では、工程や備品などが細かく管理されているため、タイヤの管理状況が全体のスケジュールや収益を大きく左右する。最も求められるのは、「車両を止めないこと」。スケジュールが組まれたオペレーションが止まってしまうと、損失が発生してしまうからだ。

 加えて、荒れている地面の上を走行することが多く、車両の使用環境が厳しい。タイヤの疲労度を的確に把握し、適切なタイミングで交換しなければならない。そのタイミングを誤ると、故障して車両を止めてしまうことになる。

 このソリューションでは、タイヤとホイールの在庫、装着、点検、ローテーション、修理、廃棄などの情報を一元管理。レポート機能も備えている。タイヤの空気圧と温度をセンサーで測定するシステム「B-TAG」からデータを収集し、即時反映することができる。在庫の適正管理、コストの最小化、交換時期の予測などに貢献できるという。

 特殊な環境で使用するタイヤを管理するソリューションは、顧客となる企業数も限られている。業界に特化したシステムを早い段階で開発した理由について、増永氏は「プロ向けのソリューションは、良いものであれば使ってもらえる。評価してもらいやすい」と説明する。厳しいタイヤ管理の需要を取り込んでソリューション提供の実績を作り、さまざまな業界に広げていく方針だ。

 「タイヤ用センサーは市販品もあるため、どの企業も何らかのシステムは入れている。しかし、タイヤのことを知り尽くしているメーカーが開発したソリューションであれば、データの見方や活用方法まで情報提供できる」(増永氏)

photo 車両に装着された「B-TAG」システムのイメージ図

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