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» 2017年10月20日 16時53分 公開

積極的な評価は感じられず:相次ぐ企業不祥事と同時進行の株高、「日本評価の買い」に疑問

日本の大企業で相次ぐ不祥事。海外勢が最も期待したアベノミクス政策の1つであるコーポレート・ガバナンス改革を揺るがす問題であるはずだが、日本株は20年ぶりの高値を更新するなど絶好調だ。

[ロイター]
photo 10月20日、日本の大企業で相次ぐ不祥事。海外勢が最も期待したアベノミクス政策の1つであるコーポレート・ガバナンス改革を揺るがす問題であるはずだが、日本株は20年ぶりの高値を更新するなど絶好調。個別企業の問題で、全体的な業績拡大期待に影響はないとの見方があるものの、世界株に連動して動く株価からは、日本への積極的な評価は感じられない。写真は都内で9月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 20日 ロイター] - 日本の大企業で相次ぐ不祥事。海外勢が最も期待したアベノミクス政策の1つであるコーポレート・ガバナンス改革を揺るがす問題であるはずだが、日本株は20年ぶりの高値を更新するなど絶好調。個別企業の問題で、全体的な業績拡大期待に影響はないとの見方があるものの、世界株に連動して動く株価からは、日本への積極的な評価は感じられない。

<日本の独自色薄い株高>

日本株だけみていると、経済や企業業績を積極的に評価した株高のようにも見えるが、高値を更新しているのは日本だけではない。ブラジルは過去最高値からやや下がったが、米国だけでなくインドやフィリピン、韓国なども過去最高値を付けている。

先進国23カ国と新興国23カ国の大型株と中型株で構成するMSCI ACWI指数<.dMIWD00000PUS>は、年初から19日までに17.5%上昇。世界景気は堅調とはいえ、年3%そこそこの成長率とは大きくかい離した伸び率となっている。

低金利による運用難環境の中で、日本を含む資産市場にリスクマネーが流れ込んでいるのが、世界的な株高の背景だ。ドル建てでみた年初来の上昇率は、TOPIXが18.7%、日経平均が16.5%とMSCI ACWI指数とほぼ同じであり、連動性も高い。

世界取引所連合(WFE)のデータでは、世界株の時価総額は9月末で80兆8707億ドル。日本のシェアは7.06%だ。多少の上下はあるものの、今年に入って7%を挟んで安定しており、世界株と連動して動く日本株の姿を示している。

「グローバル投資家は、グローバルファンドのウエートに合わせて日本株を買っているだけのようだ。日本株のファンドやETFをすごく買っている感じはしない。だから相次ぐ企業不祥事も関係ないのだろう」と、アライアンス・バーンスタインの日本バリュー株式共同最高投資責任者、堀川篤氏は話す。

<買われるディフェンシブ株>

日本の企業業績は堅調で、今の株価水準に割高感が強いわけではない。18年3月期も最高益更新の見通しで、米株と比べ低かった日経平均の予想PER(株価収益率)も15倍まで上昇。「ようやく世界標準に戻った」(ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト、井出真吾氏)だけとも言える。

日経平均はいまだ過去最高値の半分程度の水準だが、1989年当時のPERは40倍程度だった。一株利益の水準がまだ低いとみることもできるが、業績対比ではフェアバリュー水準に戻っただけだ。

しかし、株価が急騰を始める1カ月前と比較して、日本の企業業績や株式の評価を変える大きな出来事があったわけではない。1カ月前も業績好調は予想されていた。解散、総選挙の決定が日本株高のきっかけになったようにも見えるが、日銀総裁人事など不透明要因は多く、選挙後のバラ色のシナリオが描けるようになったわけでもない。

日本は「世界の景気敏感株」とされ、世界経済の拡大を織り込んで日本株が買われているとみることもできる。しかし、今回の株高局面で上昇率が高いのはゴム製品、水産・農林業、食料品などディフェンシブ株だ。「日本株を積極的に評価する動きというよりも、グローバル投資家のポジション調整にすぎない」(米系投信)との声は多い。

<新陳代謝進まない日本>

日本株の評価が低いのは、なぜか──。「ROE(株主資本利益率)などの指数が低いままでは、日本株のリスクプレミアムは高まらない。世界の株価が下落基調に転じれば、真っ先に売られてしまう恐れがある」とアライアンスの堀川氏は語る。

東証の17年3月期決算短信集計でROEは8.58%。13年3月期の4.94%からは改善しているが、以降の4年間では8%前後でほとんど変わっていない。欧州企業との差は縮まったが、10%台とされる米企業とはまだ差が大きい。

日本企業のROEが低いのは、利益率の低さが主な要因だ。今年1月に開かれた未来投資会議では、米系企業の7割超の事業が売上高営業利益率10%以上であるのに対し、日系企業は6割超の事業が5%未満というデータが示された。「強い部門を伸ばし、弱い部門を捨てるという経営が、十分できていないのではないか」と指摘している。

非効率で低収益な企業や事業に対しては、本来なら市場を通じて経営者に警告される。だが、世界株に連動し独自の動きが乏しい日本では期待しにくい。BNPパリバ証券の岡澤恭弥取締役は「日銀のETF大量購入で、議決権が行使されない株式が増えており、企業のガバナンス改善を妨ぐ恐れがある」とも懸念する。

今回の相次ぐ企業不祥事に共通する背景は、高過ぎる収益目標を達成するために現場が不正に走ってしまったことだとみられている。

日本経済は金融緩和と財政支出で支えられてきたものの、その半面で新陳代謝は進まず、多くの低収益な企業や事業が存続してしまっている。そのことがROEの低さにつながっているとすれば、従来路線の政策が続く限り、日本株の評価を変えるのは難しいかもしれない。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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