フィンテックで「異業種連携」が進む理由変化を捉えるチャンス(2/4 ページ)

» 2017年10月23日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

――金融機関にとっては、既存のビジネスモデルを大きく変える可能性がある取り組みです。そのような企業も含めて、多くの事業者や政府が力を入れ始めた背景には何があるのでしょうか。

photo Fintech協会代表理事の丸山弘毅氏

 当初はフィンテックの広がりに対して、一過性のブームではないか、という懐疑的な見方もありました。その雰囲気が変わった背景には、ユーザーの変化が影響していると思います。

 どのように変化してきたかというと、フィンテックのサービスを利用することに対して、ユーザーの抵抗がなくなってきた、ということです。無料通信アプリのLINEが提供するモバイル決済・送金サービス「LINE Pay」など、異業種からの参入や、先行している海外のサービスなどがすでに浸透しており、ユーザーもそれらを利用することに慣れてきています。

 このように、金融サービスに対するユーザーの認識が大きく変化しているため、既存の枠組みを捉え直さないと対応できなくなっているのです。ユーザーが求めているのは、より便利なサービス。それを実現するためにテクノロジーを使おうとしているのです。

お金をためる目的を知る

――従来の枠組みを超えたビジネスモデルや便利なサービスを生み出すには、金融以外の幅広い知見や技術が必要です。メガバンクなどを中心に、「オープンイノベーション」を強化する取り組みが活発ですが、他社との連携という方法で得られるメリットは何でしょうか。

 まず、ユーザーの日常行動に合ったサービスを提供しやすくなる、というメリットがあります。フィンテックサービスの利用シーンは日常生活です。買い物やビジネスなど、日常の行動に結び付く形でサービスを利用するので、関わるのは金融業界だけではありません。連携してデータ分析などをすれば、さらに質の高いサービスを提供できます。また、利用するサービスが増えたときに、1社ごとに登録する必要があると不便です。データを連携すれば、使いやすさの向上につながります。

――実際のサービスの事例は、どんなものがありますか。

 成果はまだまだこれからだと思いますが、すでに形になっているサービスでは、自動貯金アプリが分かりやすいと思います。このサービスでは、連携する金融機関内に「仮想貯金箱」となる専用口座を設置し、普段使う口座と貯金専用口座を連動させて自動でお金をためていくことができます。「旅行」や「マイホーム」などの目的と目標金額、期間を登録して、好きなルールでお金を専用口座に移していきます。定額の積み立てだけではなく、カード決済時に「お釣り」とみなした金額を貯金するというルールにもできます。貯金箱にお金を入れるのと同じ感覚で簡単に使えます。

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