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» 2017年10月26日 07時33分 公開

世界を読み解くニュース・サロン:北朝鮮の「生物兵器」は、どれほどの脅威なのか (4/4)

[山田敏弘,ITmedia]
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金正恩は「しめしめ」と思っているのか

 もちろん無闇に不安をあおるつもりはないし、理性的とも言われる金正恩がそれを実施する可能性は低いだろう。もっとも、もし異常な若き独裁者が統治する北朝鮮が本気で怒りにまかせて「敵国」である米国や韓国、日本を「攻撃」するつもりならば、核兵器やミサイルなんかよりもお手軽で効果的で、すぐに実用化できるとみられている生物兵器または生物兵器を使った自爆攻撃を実施すればいい。

 本当にクレイジーな独裁者が敵にダメージを与えたいなら、「グアムをミサイル攻撃する」と通告せずに、自爆攻撃部隊を敵国に送り込めばいいのである。それぐらいやっても不思議ではない。ただ北朝鮮がそれをすることは、現時点では考えにくい。グアムをミサイル攻撃しないのと同じロジックである。

 ちなみに、在韓米軍は04年から国防総省の指示により、もしものために炭疽菌と天然痘に対するワクチンを接種している。また15日以上韓国に滞在する国防総省職員や契約職員なども、ワクチン接種が義務になっている。実は北朝鮮も同様の対策をしているようで、北朝鮮軍部でも天然痘ウィルスのワクチン接種は必須になってるとの報告もある(韓国軍はワクチン不足を理由に実施していないのだが)。また米陸軍は生物兵器に対する監視機器も導入している。

 ただ実際に北朝鮮が生物兵器を所有しているといった話だけでも十分に不気味だ。そんなイメージが世界に広まるだけでも、北朝鮮にしてみれば、してやったりということなのかもしれない。金正恩も、しめしめ、と思っているかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。


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