北海道新幹線「札幌駅」地下案はダメ、ゼッタイ!杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2017年10月27日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

6.地下駅そのものの要因

 空調設備、換気装置、防火対策などで膨大な設備が必要。接客設備さえ設置場所が足りないというのに。地上に換気口も必要になる。その用地はどうするか。

7.長距離トンネルと接続

 線路が地下だから、そのまま地下駅に、という単純な話ではない。地下鉄と同様の防災、防火、安全設備が必要。トンネル開口部がないため換気口も必要。避難誘導路、旅客駅付近では消防設備も多く必要だ。

8.工期

 計画、設計ができていない。地下駅に変更するために、都市計画や環境アセスメントもやり直しになる。概略設計のあと、関係者による設計協議もやり直し。地下構造物の影響、地上設備の用地交渉も時間がかかる。

 現駅案で建設するためには年度内に決定という報道があり、決定できなければ地下案しか選択肢がないという報道もある。しかし、実際には地下案の方こそ時間がかかる。どちらにしても決断しなくてはいけない時期。

9.一般市民への影響

 北5条手稲通りで開削工事を行うため、長時間の交通障害が起きる。在来線、地下鉄利用者にも足止め、迂回(うかい)が発生する。駅前再開発の影響もあり、少なからず札幌の経済にダメージを与える。

10.将来性なし

 高速化の実現、北海道新幹線の計画上の終点となる旭川への延伸、函館〜札幌間の道内需要の増加によって運行本数を増やしたくても、1面2線では難しい。2面4線への拡幅もできない。運輸省時代から、新幹線の拠点駅は2面4線でないと認可しないという了解事項がある。鹿児島中央駅も2面4線で作った。

 在来線改良案であれば、新幹線プラットホームを拡幅できる。東京駅で中央線プラットホームを高層化したように、札沼線を高層化するなどの方法もある。札沼線は近郊の通勤通学利用が多いため、むしろ札沼線を地下に移し、地下鉄に隣接させたほうが便利だろう。高架駅に行く人は桑園駅を改良し、函館本線の列車に乗り換える便宜を図れる。

11.情緒的な問題

 札幌市民は札幌駅に進入する新幹線車両を見られない。これは情緒だけではなく、市民の新幹線、鉄道に関する意識の低下につながる。車両の存在感は広告効果もある。営業施策上もまずい。旅行者は札幌に到着した実感を持てない。新幹線で札幌に行っても楽しくない、となれば、地下駅は好ましくない。

 11番目の情緒については弱い気がするけれども、これだけ列挙されると、地下駅案のメリットはないといえそうだ。ここは地下駅案を支持する立場からの反論も聞きたいところだ。

photo 東京駅のプラットホーム配置図。東海道本線(上野東京ライン)は2面4線で1日410本をさばく。直通運転も多いけれども、折り返し列車も多数ある

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