“おとなのパルコ“は上野・御徒町で成功するのか?繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/4 ページ)

» 2017年11月06日 07時30分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

相当な好立地である上野・御徒町商圏

 60年代から70年代の高度経済成長期に、上野・御徒町エリアは「北の玄関口」と呼ばれていました。東北などから東京に働きに出てきた人や学生が、初めて上京してきた時に到着するのが上野駅でした。

 また、レジャーが少なかった時代に上野動物園は最大の憩いの場所でした。博物館、美術館、公園、東京芸術大学などの文化・教育施設が集まるエリアとして広域から人がやって来た場所です。しかし、東京駅が北へ向かう新幹線の始発駅になったことで、上野は通過駅になり始め、また新宿や渋谷、池袋といった街が商業的に注目を集めるようになり、徐々に商圏としての力を失っていきました。

 それがここにきて変化し始めています。上野・御徒町周辺は「イースト東京ブーム」で活気を取り戻しつつあるのです。「アメ横」は相変わらず集客していますし、食・雑貨の老舗など、歴史や伝統のある店や街の雰囲気が国内外問わず見直されています。また、製造業を中心に発展した歴史もあるからか、改めてオフィス立地としても注目され、上野・御徒町に本社を移転する会社も増えています。

 さらに、JRや地下鉄9路線9駅利用可能というアクセス環境の良さや、最寄りのバス停留所から毎日1000本以上のバスが走っているという好立地であり、国内トップクラスの観光拠点として年間およそ2700万人の観光客が訪れるためインバウンド需要も見込めます。国内でも非常に商圏に恵まれた場所なのです。

「パルコヤ」という新業態の特徴

 今回のパルコは新屋号「PARCO_ya」(パルコヤ)としてオープンしています。新しいお客さんに、新しいコンセプトを伝えるためです。ya(ヤ)に込めた意味は、「yet another=もうひとつの」。今までのPARCOに対しもう1つの新しいPARCOという意味と、日本の老舗をイメージさせる〇〇屋という意味も持たせています。従来のパルコとはまったく異なるターゲットでチャレンジしている店です。

ターゲットをおとなに設定

 同店のコンセプトは「おとなのパルコ」。上野で成功させて、今後のパルコ出店の新しい形を作ろうとしています。メインターゲットは団塊ジュニア世代を中心とした、大人の男女(1960〜1985年生まれの30〜50代)です。サブターゲットは銀座や丸の内、日本橋に流出している近隣居住者とオフィスワーカー、観光客です。

 パルコは渋谷でブランドを作ってきたこともあり、20代の男女が従来のメインターゲットでした。しかし同年代だけでは商売が難しくなってきています。しかも上野・御徒町は高齢者に強い街。松坂屋上野店もミセス・ハイミセス(50代、60代、70代以上)に圧倒的に強い店です。従って、同商圏を徹底的に調査し、国内有数の人口密度と人口の伸び率、働きに来る方も多いことに注目して大人のターゲットに対応する店を作ったのです。

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