そもそもパラダイス文書はどんなものなのか。問題の中心になっているのは、1340万ファイルに及ぶアップルビー社の内部文書だ。そこには同社とビジネス関係にあった世界中の人や企業の記録が含まれ、いかに彼らが19地域に広がるタックスヘイブンで租税回避をしていたのかについて明らかにされているという。
現時点で明らかになっている人たちには、オフショア投資をしていたと批判された英国のエリザベス女王や、金の流れからロシアの企業とつながりが指摘された米国のウィルバー・ロス商務長官、タックスヘイブンにからむ投資に手を出していた米歌手のマドンナや英バンドのU2のボノなどだ。英F1ドライバーのルイス・ハミルトンはプライベートジェット機購入にかかわる租税回避が指摘されたり、サッカーの英プレミアリーグ・エバートンのオーナーについての金の動きなども報じられている。
また、米企業のアップル、さらには、ナイキのロゴやタクシー大手のウーバーのアプリ、ボトックスで有名なアラガンの特許、などが事業の本部をバミューダやケイマンに置いて税金対策を行っていたことも明らかになっている。基本的には、どの疑惑も巧みな「節税対策」または「投資」と言ってしまえばそれまでのケースばかりである。
そしてこのパラダイス文書は重大な問題がある。取りざたされている文書は、バミューダにある民間の大手法律事務所から「盗まれた」文書だということだ。
どういうことかというと、今回の暴露を受けて、アップルビー社はこんな公式な声明を出している。「11月6日に英テレビ番組『パノラマ』で報じられるなど、数多くのメディアで、今回の出来事(パラダイス文書)は、データのリーク(漏洩事件)であると取り上げられ続けている。私たちは次のように繰り返し言いたい。私たちの会社はリークの対象になったのではなく、深刻な犯罪行為の対象になったのです。私たちのコンピュータシステムがプロのハッカーの手法を用いた侵入者によってアクセスされたのです」
つまり、メディアが世界的に報じているアップルビー社の内部文書はハッキングというサイバー攻撃によって意図的に盗まれたものであり、「内部告発」や「情報漏洩」といったケースではないという。これはやはりハッキングが指摘されたパナマ文書でも同じだったが、要するに元の情報は何者かによって民間企業から盗まれた可能性が高く、その“犯人”は匿名でメディア(南ドイツ新聞)に流したのである。
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