顧客優先か労務管理優先か? ハイラックス復活の背景池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2017年11月20日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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ハイラックスの向こう側

 さて、ふたを開けて見て、果たしてクルマは売れたのか? 取材した10月11日時点で、クルマを見ずに発注された台数は2300台。見通しが立たない中で、止むを得ず掲げた年間計画台数の2000台は事前注文のみでクリアすることができた。ちなみに内訳で言えばハイグレードモデルが85%。購入中心は20代から30代の若者。男性が95%。色は黒。

 拍子抜けだったのは、「仕事で使うから乗り換え用の新型が必要なのだ」と騒いだ肝心の旧モデルからの乗り換え顧客は下取りで見る限り、たった23台にすぎなかった。

北海道では働くクルマとしての需要が高く、乗り換えるクルマがないと嘆いていると言うが…… 北海道では働くクルマとしての需要が高く、乗り換えるクルマがないと嘆いていると言うが……

 カタログ請求の年齢別で見ると、1番多いのは30代以下、次は60代となるそうで、アクティブなスポーツ&レジャーを好む若者と、子育てを完全に終了して、家族のためのミニバンを卒業し、自分のために何に乗るかという層が興味を示しているようだ。

 仕事用途の乗り換え需要を予定通り進めるという課題を残しつつも、若年層と団塊世代にそれなりにアプローチできたと言う意味では面白い結果とは言えるだろう。ただし、普通に考えて大多数の若年層が乗り出し400万円のクルマにおいそれと手が届くとは思えず、2300台という限られたマーケットだからこそ、少数の富裕な若年層にリーチできたと考えるべきだと思う。

 ハイラックスの復活の向こうにはぼんやりとした課題がいくつも浮かび上がってくる。グローバル化の中でプレゼンスを失っていく国内マーケットをどうするのか。ブラック企業が世相を騒がす中で、労務管理と顧客要望をどう折り合わせるのか。そして若者のクルマ離れというざっくりと分かりやすい説明で理解されている状況に対するもっと詳細な分析。いずれもこれからの自動車メーカーが避けて通れない問題ばかりだと筆者は強く感じるのである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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