路線と思惑の交錯―― 阪急神戸本線と神戸市営地下鉄の直通計画杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年11月24日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

新構想の連発で2017年をにぎわせた阪急電鉄

 阪急神戸本線と神戸市営地下鉄の相互直通構想は、04年に阪急電鉄側が構想し、神戸市営地下鉄に打診していた。しかし、地上にある阪急三宮駅を地下化する大工事で、当時でも総事業費が1000億円を超えると見積もられており、神戸市側が難色を示していた。それから10年以上たって、現職市長が公約に掲げるまでに至った。現市長は前市長の指名後継候補だった。前市長時代は渋り、現市長は前向き。神戸市側にどんな変化があったのだろう。

 一方、阪急電鉄側は急な進展に驚いていたと思われる。今年に入って阪急電鉄は3本の新線構想を打ち出している。神戸市営地下鉄直通計画は構想にとどまっていたため、現在の阪急からすると、4番目の新線計画という感覚になるだろう。

 阪急電鉄の新線計画の1つ目は「なにわ筋線計画」に関連して、十三とうめきた新駅を結ぶ路線。この路線は阪急の線路規格(軌間1435ミリ)ではなく、JRと南海の線路規格(軌間1067ミリ)に合わせるとまで譲歩し、関空への直通運転を望んでいる。

 2つ目は、1つ目の路線を十三から逆方向へ延伸し、新大阪駅へ結ぶ路線。なにわ筋線もJRの貨物線を転用して新大阪駅まで通じているけれども、JR西日本は南海電鉄の直通には抵抗しているとうわさされており、南海電鉄の関空特急「ラピート」は、この阪急の新線を経由して新大阪と関空を結ぶとも考えられる。

 3つ目は伊丹空港直結線だ。阪急宝塚線の曽根駅から分岐し、伊丹空港ターミナルビルの地下に至る路線だ。実現すれば梅田と伊丹空港が15分程度で結ばれるとみられる。空港と大阪都心のアクセスが大幅に改善される。近畿圏在住者だけではなく、他の都道府県から大阪へ向かう人にとっても関心が高い。国家的プロジェクトにしてもいいくらいの構想だ。

 そして4つ目に阪急神戸本線と神戸市営地下鉄の相互直通構想が浮上した。大手私鉄の阪急電鉄とはいえ、これだけのプロジェクトを同時進行する体力と資金力があるか。優先順位を設定する必要があるだろう。資金の面では、交通インフラ事業だけに自治体や国からの支援を期待できるはず。支援を取り付けやすいところから始めるという考え方はある。しかし、人材面は工事の従事者、管理者など資源に限界がある。どの路線を優先するか、そのプロジェクトが阪急電鉄の路線網にどれだけ貢献するかを考慮して配分する必要がある。

photo 阪急電鉄の新線、路線改良構想(国土地理院地図を加工)

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