路線と思惑の交錯―― 阪急神戸本線と神戸市営地下鉄の直通計画杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2017年11月24日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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クロスする運行形態になる?

 課題の2つ目は「運行形態」をどうするか。2つの路線が相互直通運転する場合、両社の終点同士をくっつけて1本化するという話なら簡単だ。しかし、この構想では、2つの経路それぞれの中央で結び、新たなルートを作る形になる。運行本数を純増するなら問題ないけれども、もともとあった路線の旅客需要を超える供給量にするわけにはいかない。つまり、相互直通運転から外れたルートは減便になるだろう。

 阪急神戸本線は三宮から神戸高速鉄道に乗り入れて新開地に至る。神戸市営地下鉄西神・山手線は、ニュータウンから三宮を経て、山陽新幹線の新神戸駅に至り、さらに北神急行電鉄で谷上まで直通する。このルートは、谷上で神戸電鉄と接続し、神戸市の北部地域と神戸都心を結ぶ役割がある。減便されるとすれば、神戸高速鉄道の三宮〜新開地、西神・山手線の三宮〜新神戸だ。運行本数を維持するなら、三宮駅で折り返す列車を設定するしかない。

 この運行ルートの「ねじれ」を解決するためのウルトラC的な解決案は、阪急神戸本線と西神・山手線の西側の相互直通に加えて、神戸高速鉄道と西神・山手線の東側、さらに北神急行との相互直通運転を実施し、クロス型の路線網にすると良さそうだ。しかし、これを実現するためには、三宮駅の大規模な改修が必要で、とうてい1000億円では済まない。新開地方面と新神戸駅の直通運転は沿線からも歓迎されそうだけど、ちょっと夢見がちな話である。

 お金のかかる話ばかりで、今後の需要予測など具体的な検討結果が待たれる。しかし、阪急神戸本線の三宮駅側を地下化し、線路を西神・山手線に寄せることで、現在の阪急三宮駅付近の地上駅部分は再開発ができる。東京・渋谷で東横線の渋谷駅を地下化し、跡地にさまざまなビルや施設が作られるように、三宮に新しい街区を出現させるという副産物もありそうだ。こうした新しいまちづくりも含めて、この相互直通プロジェクトの行方に期待したい。

photo 運行ルートの変化をどうするかが課題

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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