電化路線から架線が消える日杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2017年12月01日 06時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

架線は鉄道にとって必要悪?

 電車にとって架線は必要だ。しかし、黒磯駅ほど複雑ではなくても、常に感電の危険と隣り合わせだ。正月には架線に凧が絡まり全線運休というニュースを聞くし、強風時には布団や枝が絡んで列車が停まる。2015年の4月には秋葉原駅と神田駅の間で架線柱が倒れたため、9時間半にわたって運休したし、同年8月には京浜東北線の電車がエアセクション(電力境界地点)で停止、過電流で架線を焼き切ったというニュースがあった。その後も、架線切断による運休というニュースをしばしば聞く。

 もういっそ、架線なんかない方が良いのではないか?

 事故の原因は元から絶たなきゃダメだ。架線がなければ架線トラブルはなくなる。そもそも景観上、美しくない。ゆりかもめや日暮里舎人ライナー、大阪市営地下鉄御堂筋線など、架線がない第三軌条方式の地上区間に乗ってみれば、上空がスッキリとすがすがしい。日本の鉄道電化の全てを第三軌条方式で作り直したい。もっとも、歩いて手が届くところに高圧電流があるわけで、安全上の問題がある。

 では、架線の入らない電車を開発すれば良いのではないか。

 その通りだ。蓄電池電車が実用化されている。JR東日本が烏山線で運行している「EV-E301系直流電車」や、JR九州が筑豊本線で導入した「BEC819系(DENCHA)交流電車」が蓄電池式電車である。BEC819系はJR東日本も採用し、男鹿線で「EV-E801系」として運行している。架線のある区間や駅の架線から電気を受けて充電し、架線のない区間をモーターで走る。この方式で、JR東日本とJR九州は、非電化区間を架線なしで電化させた。

 台湾の高雄市を走る路面電車も蓄電池方式だ。駅に設置された架線から電気を取り込む。駅間の街路に架線がないため、景観はスッキリ。空も広々。観光地にふさわしい乗りものと言える。

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