就活生を悩ませる、おじさんたちの「個性」「人間力」という言葉常見陽平のサラリーマン研究所(1/3 ページ)

» 2017年12月08日 06時00分 公開
[常見陽平ITmedia]

 2019年卒の就活が慌ただしくなっている。本来であれば大学3年生の3月に採用広報活動開始、大学4年生の6月に選考開始なのだが、「インターンシップ」という名のもとで、早期接触が行われている。

 インターンシップというと数日間行う「職業体験」を想起するのだが、実際は1dayインターンシップの割合が増えており、中には会社説明会同然のようなものも行われているのが実態だ。グループワークやプレゼンなどをさせる企業もあるが、優秀な学生の見極め、早期接触を目的としていることは明らかだ。そこで活躍した学生には「今度は2dayのプログラムがある」などの案内を送り、囲い込んでいく。

 さて、この時期は意識高い系ウォッチャーとして、たまらないシーズンである。SNS上で意識高く就活生にエールを送る「若者応援おじさん」や、就活や新卒一括採用を批判する「若者の味方おじさん」が跋扈(ばっこ)するからだ。前者は、まだかわいらしい。セルフブランディングのためにやっているのだろう。ただ、後者は罪である。若者を何も救わないからだ。

photo 既に2019年卒の就活が盛り上がってきている

 よくある新卒一括採用批判は「決められた時期に一斉に行うのはおかしい」「没個性」「学業を阻害する」「卒業後にするべきだ」などというものである。気持ちは分からなくはない。

 もっとも、長く続いていることには合理性がある。ある時期に集中して行った方が、企業も学生も効率が良い。「没個性」と言う人は、企業の面接の舞台裏をのぞいてもらいたい。学生のことを理解するために人事が研修を受けるなど、並々ならぬ努力をしている。

 学業阻害は大学教員として私も問題だと思うが、一方で私立文系などは大学3〜4年生になるとゼミ以外の科目が極めて少なくなるし、理系にとっては大変だが、文系ほど必死にならなくても内定が決まりやすいので、そこまで学業阻害にはならない。

 多様な体験を積むためにも卒業後に就活をするべきだと言うが、奨学金問題、ブラックバイト問題に代表されるように若者が貧しくなっている中で、卒業後に就活をするとなると、非正規雇用者がますます増えることも懸念される。生活するためにアルバイトをせざるを得ず、就活をする暇さえなくなるからだ。

 この手の話をすると、「○○社は新卒一括採用にとらわれない採用をしている」などという、意識の高い反論があったりもする。このことを大きく取り上げて「新卒一括採用崩壊」などと言う輩もいる。これは採用対象のポートフォリオ化であり、さらには要件緩和にすぎないことに注目するべきだ。

 なお、政府系の有識者会議でこの手の企業のデータを開示してもらったことがあるが、実際、制度として通年採用などを設けていても、ほとんど採用実績がなかったりするのだ(あくまで一事例であるが)。

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