タクシーも“攻め”の時代に 5分で分かる最新事情ビジネス激変

» 2017年12月21日 15時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 タクシー業界は激変の時代を迎えている。都市部を中心に、運賃の改定や配車アプリを利用したサービス拡充など、その変化は多岐にわたり、業界全体を様変わりさせそうだ。その背景には、米Uberが世界で急成長させている「ライドシェア」ビジネスなど、既存のビジネスモデルを揺るがしかねない変化に対する危機感がある。

 2017年もさまざまな新しい動きがあった。利用者にとってはどのようなメリットがあるのか。その動きを追った。

photo トヨタ自動車が10月に発売した新型タクシー車「JPN TAXI」

初乗り410円導入から1年

 東京都23区、三鷹市、武蔵野市では17年1月、初乗り運賃が410円に改定された。初乗り距離は2キロから約1キロに短縮。利用距離が2キロまでなら値下げになり、6.5キロ以上だと値上げになる。「ちょい乗り」需要や外国人観光客の利用喚起を促すことが狙いだ。

 国土交通省が5月に発表した、導入後2カ月間の効果によると、前年同時期の実績と比較して、初乗り410円(約1キロ)以下の利用回数は36%増加。改定前の初乗り730円(2キロ)以下の利用回数は19%増えた。「ちょい乗り」しやすくなったようだ。

 一方、調査会社のマクロミルが12月に発表した、タクシーの利用状況に関するアンケート調査結果によると、初乗り運賃値下げで「利用頻度を増やしたい」と回答した人は16%にとどまった。74%が「利用頻度を変えようとは思わない」と答えた。

 導入から約1年。実際に短距離利用して利便性を実感している人も多いようだが、その周知にはまだ課題がありそうだ。

 運賃に関しては、道路状況や運行ルートなどによって料金が変動しやすく、降車時まで料金が分からないことが、タクシーを使いづらい要因の1つになっていた。その不安をなくすため、運賃を乗車前に確定させる実証実験が実施された。

 その結果について、国交省が12月19日に発表した。実験は、配車アプリで乗車と降車の場所を入力してもらうことで、事前に運賃を確定させる方法で実施。利用者の67%が「また利用したい」と答えた。アプリを利用するサービスだったことから、普段利用が少ない20〜30代の利用者の割合が多かった。事前確定した運賃と実際のメーター運賃は、総額でほぼ同じだったという。

 国交省は本格導入に向けて、さらに検討を進める方針。制度化されれば、スマートフォンを使い慣れた世代にとっては、タクシー利用に対するハードルが下がるかもしれない。

photo タクシー運賃事前確定の実証実験で得たアンケート結果(出典:国土交通省)

街の風景は変わるか

 18年初頭には、「相乗りタクシー」の実証実験も始まる。東京23区、三鷹市、武蔵野市で営業運行する事業者が1月22日〜3月11日に実施。同じ方向に向かう利用者を配車アプリでマッチングし、1人で利用するよりも割安の運賃で乗車できるようにする。乗車、降車の場所を入力することで運賃が計算され、乗車前に料金が分かる。

 このサービスもアプリの利用が前提となる。また、ライドシェアを規制している日本のタクシー業界で、シェアリングビジネスの手法を取り入れたサービスを試行することから、シェアリングへの抵抗が少ない若年層が主なターゲットになりそうだ。

 運賃や乗り方だけではなく、タクシーの形も大きく変わりつつある。トヨタ自動車は10月、タクシーの新型車「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」を発売。一般的なセダンの車両のイメージからは大きく変わるワゴン型。車高が高く、電動スライドドアも備えているため、乗り降りしやすい。すでに全国のタクシー会社で導入が進んでおり、運行車両も増えてきた。

 トヨタは、タクシー専用車「クラウンコンフォート」の生産をすでに終了。現在最も多く利用されているタクシー車両だが、今後は新車が販売されない。ワゴンの新型車が、街の風景を徐々に変えていくことになりそうだ。

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