シャアVS.ダース・ベイダー 上司にするにはどちらがいい? 激動時代におけるリーダーの条件『最後のジェダイ』公開記念(2/4 ページ)

» 2017年12月22日 11時51分 公開
[ITmedia]

 なぜ野望が薄かったのか。シャアは、革命の思想家、ジオン・ズム・ダイクンの息子です。世に知られた家の子であり、それゆえ強い上昇志向を持つ必要はなかったのでしょう。

 後に「赤い彗星」としてアクの強い、派手な自己演出を見せますが、あれは復讐という秘めた目的のために行った「仮面の行為」でした。しかしその「仮面」がやがて彼の素肌に密着し、生身と一体になっていくのですが。

 一方、ダース・ベイダーは、母とともに売られ、奴隷として暮らした過去を持ちます。しばしば指摘されることですが、この出自が彼の上昇志向、地位へのこだわり、若いころの強烈な自己承認欲求へとつながっているのではないかと、やはり想像してしまいます。

強さのベイダー、憧れのシャア

photo ダース・ベイダーを描いた赤い江戸切子グラス (c) & TM Lucasfilm Ltd. Licensee:前畑株式会社

 こうした違いが、ふたりのリーダーとしての資質にもまた、違いをもたらしているようです。

 ダース・ベイダーのリーダーシップは、恐怖による支配。もともと銀河帝国自体が、恐怖支配による秩序の確立を目指していましたが、ダース・ベイダーも失策を犯した部下はフォースチョーク(テレキネシス的なパワーで首を締める)で即座に処刑していました。

 ただ彼は、圧倒的に揺るぎなく、強かった。戦場では自分自身が先陣に立ち、活躍した。兵士たちにとっては、伝説の英雄を仰ぎ見るような、楚漢争覇における項羽を見る兵のような気持ちになったことでしょう。

 彼のマスクを手に入れ、崇拝していた、カイロ・レンのごときフォロワーを生んだことも大いに納得です。

 だからダース・ベイダーについて、陰口をたたくような雰囲気は帝国軍にはまったくありませんでした。一方、シャアのほうは部下に「ロリコンかも」などと言われています。

 シャアは、自分自身が、軍令無視ぎりぎりのところで独走し、戦場で華々しい戦果をあげることで立身した人物です。それゆえ彼の部下は「自分もまた独走し、結果として手柄をあげてしまえばそれでいい」と考えるところがあった。たとえば、かの有名な「ジーンの暴走」です。

 あの時ジーンは、はっきりとシャアをモデルとして「戦場の戦いで手柄を立てて出世した」と発言し「手柄を立ててしまえばこちらのもの」とうそぶく。結果、デニム曹長も巻き込んでザク2機を喪失。シャアは「若さゆえの過ち」を反省することになりますが、しかし彼は「部下にとってあのようになりたいという、憧れのリーダーだった」といえます。

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