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» 2017年12月25日 07時00分 公開

ゼロからのモノづくり:EVスポーツカーに挑むエンジニアが追い求める“失敗” (1/4)

EVスポーツカーの開発で注目されるGLM。ベンチャーでありながら量産車開発を実現した同社の技術力の要が、技術本部長の藤墳裕次さんだ。藤墳さんのモノづくりへの思いと“失敗”を重ねた開発について聞いた。

[加納由希絵,ITmedia]

 自分の手を動かして、失敗を重ねながら、モノづくりをしたい。それを追い求めて電気自動車(EV)のスポーツカーの開発に突き進むエンジニアがいる。EVベンチャーのGLM(京都市)で技術本部長を務める藤墳裕次(ふじつか・ゆうじ)さんだ。

 GLMは、往年のスポーツカーのコンセプトや車名を継承したスポーツEV「トミーカイラZZ」を開発。国産EVとして初めてスポーツカーの量産化を成し遂げ、注目を浴びた。次の段階として、想定価格4000万円のEVスーパーカー「G4」の量産化に向けて、研究開発を進めている。

 大手自動車メーカーで自動車開発をしていたにもかかわらず、「ゼロからのモノづくり」を求めてGLMに移った藤墳さん。その決断に至った信念と、トミーカイラZZ開発に至るまでに重ねた“失敗”について聞いた。

photo GLM技術本部長の藤墳裕次さんと「トミーカイラZZ」

トヨタからベンチャーへ

 藤墳さんは中学時代からバイクが好きだった。おのずと、将来はバイク開発の仕事を目指す。大学卒業後、いったんは別業界のメーカーに就職するが、諦めきれずに転職。縁あって日産自動車に入り、「スカイライン」などの車体設計に携わった。

 日産で「クルマの難しさ、面白さを知った」ものの、バイク開発の夢を再び追って川崎重工業に転職。米国向け大型バイクの開発に携わる。ついに夢がかなったが、そこで「満足してしまった」。バイクより複雑な自動車開発の面白さもすでに知っている。「困難を乗り越える、という達成感を味わいたい」。さらにモノづくりを追求しようと、トヨタ自動車に入った。

 トヨタは「厳しい職場だった」と振り返る。図面を書いても、「トヨタにとって、最も良い」と納得してもらえないと承認されない。「取りあえずやってみる」という選択肢はなかった。過去のデータや競合の動向を分析し、さらにトヨタの思想も踏まえて提案をする必要がある。思い通りにいかないことも多かった。

 厳しい環境でクルマ作りの経験を重ねるうちに、ある思いを抱くようになる。それは「失敗しながらモノづくりがしたい」という気持ちだ。徹底的に分析してから設計、開発に取り掛かる大手メーカーでは、それが難しいと感じていた。ルールがない環境で、自分で考えてやってみて、失敗して、改良して完成に近づけていく。そんな「ゼロからのクルマ作り」に対する思いが膨らんでいった。

 そんなとき、偶然目にしたのがGLMに関する記事。ガソリンエンジン車として約20年前に販売された伝説のスポーツカー「トミーカイラZZ」をEVで復活させる挑戦によって、注目され始めていた。「何もない会社が車を作ろうとする無謀さ、そしてまだ何も始まっていないことに対して、面白いと思いました」。GLMなら、自分がイメージしているモノづくりができる。その確信があった。

 転職を決めると、周囲は「頭おかしいんちゃうか」などと猛反対。妻は「好きにしたら」と言ってくれたものの、収入は3分の1に減った。当然不安はあったが、思い切って飛び込んだ。2011年4月のことだった。

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