ネスカフェで「ダバダ」と「違いがわかる男」が消えた理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2017年12月26日 08時15分 公開
[窪田順生ITmedia]

どうしてもインスタントコーヒーを想起してしまう

ネスレ日本は2013年に「脱インスタントコーヒー宣言」

 違いがわかる男というフレーズとあの印象深いテーマはどこへ消えたのか。もしやカルビーのように作曲者やコピーの発案者とトラブルとかになってしまっているのではないか(関連記事)。

 そんな疑問を解消するため、製造販売元のネスレ日本に問い合わせたところ、年末の忙しい時期にもかかわらず、コーヒー事業を統括されている飲料事業本部レギュラーソリュブルコーヒービジネス部の島川基部長が経緯を説明してくれた。

 「我々がダバダや違いがわかる男を封印したのは、あれらの曲やフレーズを耳にしてしまうと、どうしてもインスタントコーヒーを想起してしまう方が多いからです」

 覚えている方も多いだろうが、ネスレ日本は13年に「脱インスタントコーヒー宣言」をして、日本インスタントコーヒー協会などの業界団体からも脱会した。

 原因は、ネスレが開発した新製法にある。これを「レギュラーソリュブルコーヒー」と新たに表記することに対して、業界団体が難色を示し、ネスレはこの新カテゴリーを訴求するため独自路線をとることとなったのだ。

 もはや我々のつくるものはインスタントコーヒーではない。この強いメッセージを打ち出すなかで、インスタントコーヒーの代名詞ともいうべきダバダや違いがわかる男は適当ではないと判断したのだ。

 ただ、レギュラーソリュブルコーヒーは、微細粉したコーヒー豆をネスカフェ独自の抽出液に包み込む製法で、開封後に酸化してしまうレギュラーコーヒーより、香りや味わいがある、という調査もあるそうだ。そんな上質なコーヒーならば、「インスタントではない」と断りをうったうえで、ダバダや違いがわかる男というレガシーを再活用する道もあったのではないか。

 「おっしゃるとおりですが、ダバダと違いがわかる男が生まれた時代と今では社会が大きく変わっています。また、我々はこの10年でブランドの若返りも行ってきました。なにかを変えるためには、どうしてもなにかを手放さなければいけません」(島川部長)

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