――2017年は、ブラック企業リストに載っていない企業も多くの問題を引き起こしました。印象に残った事件はありますか。
新田氏:ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが、ネット上の悪評を隠すために米国のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)を申請し、仲暁子社長の顔写真を載せたブログなどをGoogleの検索結果から削除した件は印象的でした。著作権を守るためのDMCAが、悪評を防ぐ手段として使われることに驚きました。
また、今夏裁判になった件ですが、13年にゼリア新薬工業の新人が、研修を委託されていた企業から「過去のいじめを吐露しろ」などと強制され、精神疾患を発症して自殺した件は憤りを覚えました。
「新人は厳しくしつけるべき存在だ」という価値観の企業と、自己啓発系の洗脳研修を手掛ける会社が手を組んだために起きた悲劇だと感じています。
直近では、女性向けファッションブランド「CECIL McBEE(セシルマクビー)」を展開するジャパンイマジネーションを巡り、孫請け企業が外国人技能実習生に最低賃金を下回る給与で働かせていたことが問題になりました。これも、労基署の人手不足などによって臨検の手が回らなかったため、埋もれていた案件だと考えています。
――ブラック企業はなぜなくならないのでしょうか。
新田氏:法律を違反した場合の罰則が甘く、抑止力として機能していないためでしょう。ブラック企業リスト入りした企業の中で唯一訴訟に発展し、有罪判決が下された電通に課された罰金も、たったの50万円。大企業にとっては微々たる額です。
多くの企業は「違反がばれても罰金を払えばいいだけ」と甘くみているのではないでしょうか。いわば、運転中のスピード違反のようなものです。
――海外の法律は、もっと厳しいのでしょうか。
新田氏:欧米では、労働問題に関する法律批判を厳しく罰する国が多いです。例えばドイツは、違法残業を繰り返した企業に約200万円の罰金を課しています。しかも、企業の資産ではなく役員などのポケットマネーから払わせるのです。
一方、日本では、電通の社長が罰金200万円を自腹で払うことはありえませんよね。
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