滅亡する50ccバイク、トヨタのGoogleキラー池田直渡「週刊モータージャーナル」2017総集編(2/3 ページ)

» 2018年01月01日 06時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

驚愕の連続 マツダよそれは本当か!

 17年8月。マツダは長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030」を発表した。

 最初に驚愕したのは「Well-to-Wheel」(燃料採掘から車両走行まで)での企業平均二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに、2010年比で50%、2050年までに90%削減するという発表だ。「そんなことが可能なのか!」と問いただしたいところだが、マツダにしてみればパリ協定で決まった以上、できるかできないかではなく、やるしかないということだろう。

エンジンからスタートし、今やトランスミッションや、サスペンションなどクルマを構成するすべての要素に広がったSKYACTIV。国内では先代CX-5からフルスカイアクティブとなった エンジンからスタートし、今やトランスミッションや、サスペンションなどクルマを構成するすべての要素に広がったSKYACTIV。国内では先代CX-5からフルスカイアクティブとなった

 問題はその実現プランだ。パリ協定の数値目標を受けて世界中が「すわ電気自動車!」と息巻いているところを、マツダは「本命である内燃機関の改革を行う」と言うのだ。1つには先に説明したWell-to-Wheelの話がある。インフラ電力の発電が全て再生可能エネルギーか原発にならない限り、イメージ的に言えば、電気自動車(EV)が削減したCO2はそっくりそのまま発電所に付け替えられて、発電所でまとめて排出している状態である。Tank-to-Wheel部分だけ切り出してでゼロエミッションを主張するEVは良いところだけトリミングした主張に見えるのだ。

 さて、マツダが07年に策定した環境技術の採用拡大予測の図表を見ると、ピラミッドの右側に電気デバイスの採用具合が、左側に内燃機関の採用具合が描かれている。この2つがオーバーラップしたところは「エンジンとモーターの両方を使う」ことになる。エンジンは徐々に減りはするものの、35年の時点でも8割のクルマに搭載されるとマツダは見ているのだ。

環境技術の採用拡大予測 環境技術の採用拡大予測

 とんちんかんな予想だと主張する人もいるだろうが、少なくとも15年現在を見ると、この予想は当たっていると言ってもいいだろう。そういう予測の上で、マツダはプランを策定している。

 その内燃機関の改革の大本命こそが夢のエンジンと言われてきた予混合圧縮着火(HCCI)である。HCCIはディーゼルとガソリンそれぞれの欠点を解決しつつ、両者の良い面を取り入れた新しい燃焼方式のエンジンで、内燃機関の熱効率を大幅に改善する可能性がある。しかし技術的なハードルが高く、世界中のメーカーが研究を重ねたが実用化できなかった。結局モノにならなそうだと、業界全体が諦め気分になっている中、マツダだけが「次はHCCIだ」と主張し続けた。

 懐疑的な視線が集まる中、サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言 2030とともに、マツダは突如HCCIの技術詳細を発表し、次いで試作車をメディアに試乗させた。不可能だと思われていた新エンジンSKYACTIV-Xは業界を震撼させた。いかにもマツダらしいチャレンジングなエンジンである。登場は19年と予告されている。

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