「沖縄県が観光収入を過大発表」というフェイクニュースはなぜ生まれたかスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2018年01月09日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

タイトルがかなりビミョー

 さて、これを踏まえて、「沖縄県が観光収入を過大発表 基地の恩恵少なく見せ、反米に利用か」という記事のタイトルをもう一度かみしめていただきたい。

 「参考」とはいえ、あまりに大雑把な数字の並べ方から、そこになにかしらの意図があるのではないかと疑われるのはしょうがない。が、このタイトル、この煽り、かなりビミョーではないだろうか。

 「フェイク」とまでは言わないが、朝日新聞の加計学園報道とよく似ている。自分たちの論調とそぐう結論へと導きたい、とにかくオレの話を聞け、というギラギラした作為が行間からジワーっとにじみ出てしまっている、ように筆者には見えてしまう。

 ただ、そのあたりは人それぞれの受け取り方なのでいいとして、個人的に気になるのは、なぜこのタイミングで、このようなビミョーなニュースが世に送り出されたのかということだ。

 問題とされる平成26年度県民経済計算は、平成28年12月22日に公表されている。1年前に出た「取り扱い注意」と銘打った参考資料の重箱の隅をつつくような話をなぜ多くの人が仕事始めの日にぶつけてきたのか。

 「産経の記者さんがたまたま統計を見直していたりとかして、おかしな点に気付いただけでしょ」と思う方も多いだろう。筆者もそう思いたいが、この記事のある一節が引っかかってしょうがない。

 『沖縄振興に関わる政府関係者は「基準の異なる数字を比較材料として使うのは、統計上重大な欠陥」と指摘し、政府の沖縄振興策の適切な執行のためにも、早急な改善を求めている』(産経新聞 2018年1月4日)

 沖縄県統計課が「過大発表」していることを突き止めたわけだから取材者のセオリーとしては、統計課やら県知事をネチネチと問い詰めるはずだ。が、なぜかこの記事ではそれをすっ飛ばして、政府関係者による「お叱りコメント」が掲載されている。

 加計学園の報道で、前文科事務次官の前川喜平さんばかりを取り上げたマスコミがあったことからも分かるように、こういう偏った構成は、ネタ元にガッツリ丸乗りしたときによく見られる現象だ。そう考えていくと、ひとつの可能性が浮かぶ。

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