「ガキ使」を批判する人が増えれば、トンデモ権力者が生まれる論理世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2018年01月11日 07時36分 公開
[山田敏弘ITmedia]

お笑い番組がつまらなくなる

 まずそもそもこれらの番組はお笑い番組だということだ。もちろんそれを面白いと思う人もいれば、笑えないジョークだと思う人もいるだろう。だがお笑い芸人や番組の作家たちが、年末の開放的な空気の中で人々を笑わせるためにひねり出したアイデアなのである。明らかな悪意を感じないものなら、鬼の首を取ったかのように非難する必要はないのではないか。

 例えば、東北訛(なま)りで漫才をしている漫才師もいるが、それだって、人によっては不快に思うだろう。口には出さないが、「バカにされた」「差別されている」「恥ずかしい」と思う人もいるかもしれない。

 また「ガキ使」の場合は、黒人俳優のモノマネをしていただけに過ぎないとの見方もある。これももっともな指摘で、例えば肌が黒いことで知られる歌手の松崎しげる氏のモノマネをするのに、肌を黒く見せないわけにはいかない。それではモノマネにならないからだ。逆に、浜田氏のエディ・マーフィのモノマネでの登場シーンで肌が白かったら、それこそ逆に似てないと批判が出たり、酷評される可能性だってある。それは人を笑わせるプロである芸人として評価を下げることになりかねない。

 そもそも、黒人メークを差別的というなら、浜田氏がかぶっていたアフロのようなカツラにも批判の声が出てもいいはずだ。強いくせ毛は黒人の特徴でもあるからだ。黒人のメークがダメなら、芸人が白人を真似する際に付ける大きな鼻や金髪のカツラもダメということになる。白人差別になるからだ。もっと言うなら、日本で普通に使われる「黒人」という言葉自体を同様に批判すべきではないか。

 一方、「みなおか」のケースでは、確かに同性愛者を「保毛尾田」と呼ぶのは、悪ふざけがすぎるように感じる。だがそれでも、悪意はないだろうし、あそこまで「保毛尾田」というキャラクターが飛んでいると、逆にリアリティがなく同性愛者というイメージを感じない。「保毛尾田」というキャラが先に立つからだ。ただ、昔のキャラクターの名前であるために改変せずに使わざるを得なかったのかもしれないが、せめて名前だけは工夫すべきだったのかもしれない。

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 以前、レイザーラモンHGの「ハードゲイ」というキャラクターが人気を博した。あれも「同性愛者」を表現しているはずだが、名前が「ゲイ」ではなく「ホモ」なら問題になっただろう。彼が出てきたころはすでに、「ホモ」という言葉は差別的なニュアンスがあるとされていた。

 何が言いたいかというと、黒人や同性愛者を扱ったことへの批判はまさに正論であるが、それをいちいち指摘していたら、お笑い番組はいつかテレビで流せなくなるだろう。少なくとも、できないことだらけで薄っぺらいものになってしまう。

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