さらに考え方を発展させれば、多目的である点をフルに利用し、車両だけでなく顧客業務の一部を代替することで利益を上げることも可能となる。
この車両をライドシェアの企業にだけ提供した場合、トヨタは車両の販売代金(あるいはリース料金)やメンテナンス料金しか徴収することができないだろう。しかし、基本的な車両のオペレーションは全てトヨタが行い、Uberにも、ピザハットにも、そしてAmazon.comにもサービスを提供するなら話は変わってくる。
Uberの顧客を乗せてある場所に移動した後、近くにあるピザ店から配達員とピザを一緒に乗せて目的地まで運び、そこからはAmazon.comの荷物を隣の地区の集配センターまで運んだとしよう。この時、トヨタはUberからも、ピザハットからも、そしてAmazon.comからも利用料を徴収できることになる。
実際の契約がどうなるのかは分からないが、理屈の上ではこうしたビジネスが可能であり、このインフラが全世界に広がれば、トヨタには莫大なサービス収入が転がり込んでくる。
トヨタはハイエースというロングセラーの商用バンを持っており、業務用車両の運用における高度なノウハウがある。所有から利用へとクルマがシフトしていく時代においては、業務用車両は大きな収益原となり得る。場合によっては、次世代型ハイエースはレクサス以上のポジションになっているかもしれないのだ。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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