海藻の加工・販売で日本一 カネリョウ海藻、成長のワケ熊本の地で60年(3/4 ページ)

» 2018年01月23日 07時35分 公開
[BizReach Regional]
株式会社ビズリーチ

「海藻嫌い」が海藻ファンの拡大に乗り出す

 「実家が海藻加工会社を経営しているのに、海藻が嫌いでした」と話す高木氏。料理として食べたことはほとんどなく、水揚げされた海藻のにおいを同級生が「臭い。そんなもの食べんやろ」と言っているのを聞いて、ますます避けるようになっていた。

 転機は高校時代に訪れる。「そういえば、父の会社はどういう商品を作っているのだろうか」とふと思った高木氏は、初めてカネリョウの商品を食べた。選び抜いた素材を使い、丁寧に下処理すれば臭みもない。「何ておいしいんだ」と感じた。

 「私のような食わず嫌いの子どもたちを減らしたい。業界の未来のためにもファンを増やしたいと思いました。学生時代に飲食店でアルバイトをしていたこともあり、自分の作ったもので『おいしい』と言ってもらえる喜びを、カネリョウで感じたかったのです」

 大学卒業後は福岡県内の大手食品メーカーに就職し、ブランディング、商品設計について学ぶ。やがて「『カネリョウといえばこれ』と言える看板商品を開発したい」「良質な海藻の味をもっと多くの人に知ってほしい」との思いが強くなり、カネリョウに入社。オリジナル商品の開発に乗り出した。

昆布茶で海外のソムリエをうならせる

 注目したのは昆布茶だ。海藻専門の会社なのに昆布茶はラインアップになかった。また、お湯に溶かして飲むだけでなく、調味料として浅漬けやパスタなど和洋さまざまな料理にも使えると知ってもらえれば、消費拡大にもつながる。30代〜40代の主婦をターゲットに定め、ユーザーが気軽に使える商品を作りたい、と考えた。

高木良將取締役。1989年9月生まれ、熊本県宇土市出身。東海大学付属熊本星翔高等学校卒業後、日本経済大学・福岡キャンパス卒業。福岡市の大手食品メーカー勤務を経て、2014年4月にカネリョウに入社。マーケティング本部マーチャンダイザー、取締役に就任する。主に商品開発・提案を手掛け、14年10月には「究極のこぶ茶」「究極の梅こぶ茶」を発表。16年10月に自社商品の通販サイトを立ち上げる 高木良將取締役。1989年9月生まれ、熊本県宇土市出身。東海大学付属熊本星翔高等学校卒業後、日本経済大学・福岡キャンパス卒業。福岡市の大手食品メーカー勤務を経て、2014年4月にカネリョウに入社。マーケティング本部マーチャンダイザー、取締役に就任する。主に商品開発・提案を手掛け、14年10月には「究極のこぶ茶」「究極の梅こぶ茶」を発表。16年10月に自社商品の通販サイトを立ち上げる

 「昆布茶を作ったことがないので、最初は塩水のようなものが出来上がってしまいました。あらゆる会社の昆布茶を取り寄せて試飲し、社内で200回以上試作したのです。ようやく、だしではなくお茶としておいしく飲める『海藻屋』の昆布茶が完成しました」

 満を持して、2014年10月に「究極のこぶ茶」「究極の梅こぶ茶」を発表。羅臼昆布をベースにカツオやニボシ、しいたけでバランスをとり、淡路島の海藻から作った藻塩、国産きび砂糖でコクを出している。パッケージは若い世代が手にとりやすいスタイリッシュなデザインを採用した。

 販路は通信販売と百貨店、セレクトショップに絞った。毎月店頭に立ち、自ら消費者に説明しながら販売する。

 「800円という価格を考えると、スーパーにただ置いているだけでは売れません。素材にこだわり化学調味料無添加であること、料理にどのように使うのかを丁寧に伝え、良さをわかってくださる方に届けたいと思っています」

究極のこぶ茶」「究極の梅こぶ茶」 究極のこぶ茶」「究極の梅こぶ茶」

 素材の良さ、味わいが消費者に評価され、やがて飲食業界専門誌「料理王国」が選ぶ食の逸品「料理王国100選」に選出された。また、ベルギー・ブリュッセルに本部を置く国際味覚審査機構(iTQi)によって毎年開催される「The Superior Taste Award」で2016年に優秀味覚賞の2つ星を受賞している。

 嫌いだった海藻にのめり込み、気付けば海藻が苦手だった同級生が「カネリョウの商品はおいしい」と結婚式の引き出物に使ってくれるようになっていた。子どもたちに海藻の本当の味わいを伝えるため「だしソムリエ」の資格を取得して、小・中学校での食育活動にも積極的に取り組んでいる。「いつか、海藻のおいしさを味わえる飲食店も出したい」と、高木氏の挑戦は続く。

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