2018年の中国IT、家電メーカーが攻める山谷剛史のミライチャイナ(2/3 ページ)

» 2018年01月24日 06時00分 公開
[山谷剛史ITmedia]

多くの産業にスマートシステム導入

photo 2016年に出版された「互聯網+」の本。このころは人気だった

 3カ年計画の1つ「互聯網+3年行動計画(15〜18年)」は、その名の通りインターネットプラスに関する計画だ。これは工業化と情報化の融合(両化融合)について、1万社超が両化融合の国際的品質マネジメントシステムを取得し、6万社超が自社で両化融合を診断できる状況にもっていくというものだ。

 また工業インターネットのモデルとなる200のスマート製造テストプロジェクトを実行する。マイクロ企業向けの情報化サービスプラットフォームをつくり、マイクロ企業の研究開発や管理業務をサポートする環境を構築する。ベンチャー企業がより立ち上がりやすくなる環境づくりをするわけだ。

 スマートデバイスの産業振興についての計画「智能硬件産業創新発展専項行動(2016〜2018年)」が、16年9月、情報産業省に当たる「工業和信息化部」より発表されている。これは18年内に、スマートデバイスの世界市場シェアを3割に、市場規模として5000億元を目指すというものだ。また技術分野では、VR(仮想現実)、省エネ広域IoT、省エネシステム設計、高性能姿勢制御装置などについてコア技術の確立を目指し、かつ世界的な企業を輩出し、世界の特許シェア1割を目指すという。

 また開発の標準化、製品とソフトウェアのチェック、製品供給能力観測の各プラットフォームづくりを政府がバックアップすることで、スマートデバイスの標準化と政府サポート能力を世界トップレベルにもっていく。スマート工業センサー、スマートPLC、スマート無人システムなど工業級スマートシステムのモデルをつくり、生産効率を20%以上高める。システム自体を複製しやすいものとし、多くの産業にスマートシステムを導入できるような状況にもっていく。

 同計画の重点任務として供給すべき製品を列挙している。具体的にはウェアラブルデバイスや、独自OSや中国版GPSこと「北斗」、ビッグデータを活用したコネクテッドカー向け車載設備、遠隔医療などができるスマート医療機器、家庭やオフィスや教育現場で活躍するスマートロボット、工業用スマートデバイスを挙げている。

スマートデバイス販売店が各地に出現

 このように「智能硬件産業創新発展専項行動(16〜18年)」では、コネクテッドカー用デバイスやスマートロボットや工業用スマート設備などが国を挙げて重点的に強化され、部品レベルではスマートセンサーやIoT向けSoC、低レベルのハード・ソフトが開発される。また適応領域としては工業や医療や教育の領域に適応される。中国のコンシューマーを見ていると気づきにくいジャンルで官民で成長していく。

 こうした3カ年計画の中で、実際に16〜17年にかけて、特に17年には各省レベルでスマート工場建設に補助金を出すという報道発表が次々と報じられている。企業内のスマート化プロジェクトを対象にプロジェクト投資額の30%以下、1000万元以内の補助金を支給するという省もある。ともなれば中国全土で数千数万の工場がスマート化し、ひいては中国のスマート工場向けIoTデバイスの出荷台数世界シェアも高まることになる。

photo 大手ECサイト「京東」のリアルショップ

 コンシューマー向けのスマートデバイスといえば、ウェアラブルデバイスやスマートスピーカー、それにスマート家電などが挙げられる。この1、2年でスマートフォンと連携したスマートデバイスを扱うショップをモールでよく見るようになり、ECサイトの「アリババ」(Alibaba、阿里巴巴)や「京東」がスマートデバイスを多く扱うリアルショップを中国各地に展開しているのも偶然ではないだろう。

 アリババや京東はスマートデバイスを扱うリアルショップを展開しはじめたが、このきっかけはECに強いスマートフォンメーカー「シャオミ(Xiaomi、小米)」の影響が大きい。シャオミがスマート製品に力を入れ始めたのも、政府方針による必然なのかもしれない。

photo 「ITの無印」を目指し、スマートデバイスを売り出す小米

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