日銀ETF購入の「出口」、市場が描く5つのシナリオ軟着陸できるか(4/4 ページ)

» 2018年01月26日 06時00分 公開
[ロイター]
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5.買取機構を設立し棚上げ

日銀保有株を別の機関にそっくり移管する方法もある。「市場にインパクトを与えずに日銀のバランスシートからリスクを切り離す手法としては有効」と三井住友アセットマネジメント・チーフマクロストラテジスト、吉川雅幸氏はみる。

過去には、1960年代の株価暴落時に株式の買い取りを行った日本共同証券と日本証券保有組合の例がある。東証1部の時価総額に対する保有比率は共同証券が2.8%、保有組合が3.5%と、現在の日銀の2.5%より高かったが、それぞれ5年2カ月、2年10カ月と短期間で処分を完了した。

当時の保有株式の処分先は、銀行や発行体の関連企業、役職員が過半を占め、市場での売却割合は高くなかった。ただ、今では銀行が株式を保有しにくくなっているほか、合理的な理由がなければ事業会社や金融機関の間で株式を持ち合うことも難しく、受け皿は見つけにくい。

最近の事例としては、銀行等保有株式取得機構も参考になりそうだ。同機構は2000年代初頭、銀行の株式持ち合い制限に伴い短期間に大量の株式が市場で売却されて適正な株価形成が損なわれる事態を抑制するため設立された。

買い取った株式の処分は市況が安定している時期に進め、低迷している時期には抑制することを基本とし、市場へのネガティブ・インパクトを抑えるよう配慮された。簿価は2004年に1.5兆円に膨らんだが、株高基調にあった2007年ごろにかけて処分を進め、いったんは5000億円程度に減少した。

リーマン・ショック後に一時売却を凍結し、再び簿価は膨らんだが、数年前からは事業会社に対し取得機構が保有する株式を自社株買いに利用できることをアピールしており、2015年度以降、自社株買いに応じて数百億円規模の処分実績も出始めている。

保有株式の17年3月末の簿価は1.5兆円、時価2.5兆円。リーマン・ショック後に危機対応として実質的な買い取り枠となる政府保証を20兆円に拡大している。規模だけに着目すれば、現在の日銀ETFを買い受ける程度の余地はありそうだ。ただ、同機構の設立趣旨を踏まえれば、日銀からのETF買い取りはなじまない。

日銀保有のETF処分の受け皿となる新たな機構を設立するとしても、いずれは保有株を処分する点では同じだ。日銀のバランスシートをクリーンにする面では一定の効果が見込めても「単なる付け替えに過ぎず、処分する際の株価へのインパクトの観点からはあまり変わらない」と大和総研の主任研究員、太田珠美氏は指摘している。

(平田紀之 編集:伊賀大記)

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