途方に暮れていたある日の帰宅途中、自宅近くの商店街にふと立ち寄ったことが、流れを大きく変える。立ち並ぶ商店を回り、店主に声をかけてみた。すると、それまでの飛び込み営業とは違い、「話、聞くよ」と言ってくれる人がいた。この行動がきっかけで、少しずつ歯車が回り始める。
なぜ商店街で話を聞いてもらえたのか。それは、自営業の経営者が多いからだ。自分の退職金を用意していなかったり、厚生年金がなかったりする状況で、将来に対して漠然とした不安を抱いている人が多かった。その人たちに、野村さんが口にした「退職金」「年金」という言葉が刺さったのだ。
商店街で最初に話を聞いてくれたのは、40代の居酒屋のオーナー。その後、何度も通って話をした。最終的には、退職金や年金の代わりになる、貯蓄型終身保険の契約をしてくれた。今では友人としての付き合いもある、思い出深い出会いとなった。
「自営業の方は『年金は少ないんだろうな』という漠然とした知識しか持っていないケースが多い。実際にいくらもらえるのか、老後にどれくらいのお金が必要なのか、という話をすれば聞いてもらえる」。ニーズをつかむ経験をして、仕事が軌道に乗るようになった。
そして、野村さんはこのころから、ある行動を始める。それは「知り合いを増やそうとする」こと。自分から知り合いに営業した結果は散々だったが、保険を必要とする知り合いから問い合わせが来ることがあったからだ。花見やクリスマスパーティーなどのイベントを企画したり、地域の食材を使った料理をふるまったり、芸人を呼んで参加者を楽しませたり……。友人のつながりや、SNSを通じて結成した草野球チームをきっかけに、知り合いの輪を広げていった。
「イベントでは保険の話はしません。純粋に知り合いを増やしたいからです。顔を覚えてもらって、親交を深めることに専念しました」
その活動によって、知り合いが保険を考えるようになったときには、野村さんの顔が思い浮かぶように。問い合わせを受けることが徐々に増えてきた。
商店街をきっかけにコツをつかんだ飛び込み営業と、知り合いからの連絡。この両輪で、契約はそこそこ取れるようになった。入社して4年間ほどは、この2つの方法を武器に、「(全体の)真ん中ぐらいの成績」を保ってきたという。「上位層の人たちは『雲の上の存在』。自分がそこまで到達できるイメージはありませんでした」と野村さんは振り返る。ここから、どうやってトップ層に上り詰めたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング