もしICOが、ベンチャー企業における資金調達手法の1つとして確立し、その中から、第2のUberやメルカリといったユニコーン(企業価値が極めて大きい有望なベンチャー企業のこと)が生まれてきた場合、どのようなことが起きるだろうか。
この話はドルをベースにUberという会社が資金調達を行い、同社の株式が10兆円近い評価を受けたことと同じ文脈になる。あるベンチャー企業がビットコインをベースに資金調達を行い、同社が発行したトークンが10兆円の評価を得たと仮定しよう。その企業が持つ価値は、最終的には、資金調達のベースとなったビットコインの価値を押し上げることになる。つまりビットコインを基軸通貨とする、新しい産業をベースにした経済圏が出没する可能性が出てくるのだ。
筆者は前回のコラムで、仮想通貨の使い道として、国際的な決済と資産保全の2つを想定した。全世界の金融資産の0.1%程度であれば、仮想通貨が存続できる余地があると仮定し、時価総額の推定値を計算した。だが、ICOという形で仮想通貨経済圏に多くの有望なベンチャー企業が集まってくるのであれば話は変わってくる。
ICOそのものは非常にリスクが高く、詐欺が横行する可能性もあるため、筆者は一般の投資家にICOへの投資を推奨するつもりは全くない。だが同時にこのプラットフォームはベンチャー企業のファイナンス基盤という点で高い潜在力があり、この部分を無視することはできないとも考えている。
ICOという新しいプラットフォームが本当に離陸するのであれば、仮想通貨の価格の妥当性について再検討が必要となるかもしれない。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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