女子アナから働き方を変えた前田有紀さんがいま伝えたいこと好きをカタチにする行動力(2/6 ページ)

» 2018年02月13日 07時00分 公開
[伏見学ITmedia]

自分の暮らしに目を向けるうちに……

 社会人になってからはハードな毎日の連続だった。仕事に慣れるのに必死で、とにかく無我夢中で働いた。24時間いつでも駆けつけられるようにと、六本木にあるテレビ朝日の本社の近くで一人暮らしを始めた。

 東京のど真ん中で、時間も不規則。同じような日が1日もないのは刺激的で楽しかったが、心のどこかで「自然が恋しいな」と感じていた。幸いなことに、メインの仕事がサッカー番組だったため、天然芝のピッチに立ったり、郊外のスタジアムに足を運んだりする機会が多く、それが前田さんにとってつかの間の癒しとなっていた。

 入社して5年ほどたったころ、少しずついろいろな仕事がうまくこなせるようになり、視野が広がると、仕事だけではない、自分自身の暮らしの部分をもっと見つめるようになった。

 「『私が好きなものは何だろう?』と自分自身に問うと、子どものころから憧れていた自然に対して渇望していることが改めて分かったのです」

 そんな折、花のアレンジメントやブーケ作りを教えてくれる友人がいたので、休みの日に仲間で集まって花を習い始めたのである。

 「仕事をどんなに頑張っていても、暮らしとのバランスがとれていないと幸せではないのではという思いが生まれました。そこで花を買って飾ったり、植物を育てたりするようになったのです」と前田さんは打ち明ける。深夜遅くに仕事から帰宅すると、玄関に飾った一輪の花に癒されることも多々あった。

 そうした毎日を過ごしているうちに、だんだん花にのめり込んでいった。「もし人生好きに生きていいよと言われたら、花や植物の仕事をしたいかも」。いつしかそう考えるようになっていた。最初は現実的ではない、ただの空想的なアイデアにすぎなかったが、次第に思いは強まり、「もしそういう人生だったら英国に行こうかな。英国はどんなところだろうと、熱心に調べるようになっていました」。

 ふとしたことで小さく芽生えた夢が少しずつ膨らんでいき、1年、2年と経過するうちに、もはやそれが現実になりつつあった。そして前田さんは入社10年という区切りで会社を辞めた。

 決して仕事が辛かったわけではない。むしろやりがいを感じていた。

 「一緒に働く方々が良い人たちばかりで、私も皆の期待に応えるような仕事をしたいと、モチベーションは高かったです。『前田にお願いして助かったよ』と言ってもらえることがすごく励みになりました。特に新人のころ、ニュース原稿などを読むのにつっかえたり、間違えたりとたくさん迷惑をかけました。迷惑をかけた分、いっぱい活躍して恩返ししなきゃという気持ちでずっと働いていました」

 けれども、あるとき、仕事は楽しいけど、もっと自分が本当に好きなものがあるのではないかと我に返った。前田さんはサッカー選手をはじめ、世の中で一流と呼ばれる人に取材する機会が多かった。彼らに共通するのは、好きなことを仕事にしている人は目が輝いているということだ。マイクを向けて、そういう人の目をのぞき込んでいるうちに、自分も本当に好きなことを仕事にしたら、人生はどれだけ輝くのだろうという思いが生まれてきた。こうした体験も新たな一歩を踏み出すきっかけになった。

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