欧米も、アジアほどの伸び率ではないが、日本のコンテンツの刊行数や売り上げは成長している。欧米で人気がある作家は国内とあまり変わらず、村上春樹さん、東野圭吾さん、西尾維新さん、中村文則さんなどの名が挙がる。
欧米ではアジアよりも刊行スケジュール調整が難しく、1〜2年先まで刊行予定が埋まっていることも多い。基本的に有名になるのは、日本国内でも有数の人気がある作家だ。ところが中には、出版社も意外に思うほどの人気を持っている作家も登場する。
欧米のアニメ・マンガファンが集うポータルサイト「MyAnimeList」の「Top Novels」ランキングを見てみよう。並んでいるのはほとんどがアニメ化を果たした作品だが、2位と登録者数で大きな差を付けて1位に輝いているのは「空ろの箱と零のマリア」。御影瑛路さんによるライトノベルで、日本での知名度は他のランキング上位作と比べるとけっして高くはない。
御影瑛路さんの担当編集を務める講談社の泉友之さんは「御影瑛路さんは、日本ではマニアックなファンがいる作家さん。ところが全米最大級のサブカルチャーサイトであるMyAnimeListでは、多くの人が御影瑛路さんの才能に気付いています。このランキングを見て、僕も編集部も驚きました。『空ろの箱〜』は学校の教室の中で少年少女の心理ドラマが繰り広げられる特殊状況サスペンスで、内面に深く潜っていくような内容が欧米のファンの心に刺さったのではないでしょうか」と話す。
御影瑛路さんは17年12月に講談社タイガで新作「殺人鬼探偵の捏造美学」を発売。MyAnimeList公式Twitterでは、発売を祝すツイートが英語で投稿された。まだ海外版の発売はされていないが、欧米ファンの期待は大きい。
「国内でも評判は好調で、『してやられた!』という感想が多く寄せられています。MyAnimeListでのランキングが後押ししたのか、発売後1カ月という通常ではありえないスピード感で、『殺人鬼探偵』の海外版の出版予定が決まりました」(泉さん)
急成長するアジア市場と、まだまだ“人気作家”が生まれる可能性がある欧米市場。河北さんは「どちらも狙っていきたい」と意気込む。
講談社は以前から、西尾維新さんのアニメ化もされた「物語」シリーズなどを海外に展開していたが、海外市場に可能性を感じ、翻訳のスピードを速め、刊行点数も増やした。河北さんが編集を務める小説レーベル「講談社タイガ」も、約40タイトルを韓国で刊行する予定があるという。海外でも、講談社タイガのようなジャンルを売り延ばしていく構えだ。
「日本の小説は、マンガやアニメに負けない強度のあるエンターテインメントで、世界に通用します。これまでは海外の市場状況が伴っていませんでしたが、ようやく追い付いてきました。世界に向けてさまざまな方法で面白さを紹介していきたいですね」(河北さん)
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