韓国のライバルにも、KYな質問にも。小平奈緒の“神対応”に、称賛の声赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)

» 2018年02月23日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

戦いが終われば健闘を称え合う

 それでも小平は李の気持ちと彼女が置かれた立場を理解し、ライバルでありながら心の中では尊敬の念もずっと変わらず抱き続けていた。それは李も同じで公の場で会話を交わす機会はほとんどなくなっても、特に互いに火花を散らし合う試合が終わるとメディアが見ていないところで小平に声をかけ、友情の炎を完全に消しうることはしなかった。

 そしてフタを開けると李は小平に負けを喫してしまった。

 日韓関係が冷え切っているなかで、表彰台の一番高い位置に立つ権利を得た小平はレースが終わった後、これ見よがしに勝ち誇って韓国国民に日本の強さをアピールすることもできた。しかし、彼女はそれをしなかった。日の丸国旗を背負いながらのウイニングランもそこそこに敗れた李のもとへ行き、あの名場面が生まれた。

 もしかすると韓国内で日本敵視を主張している人たちから反発を招くことも考えられたし、日本でも特にネトウヨなどからバッシングを受けてしまう流れが起こり得る可能性があったかもしれない。

 しかし、それも杞憂(きゆう)に終わった。小平は、そんなことなどみじんも考えずにただ純粋な気持ちで行動した。戦いが終われば勝者も敗者もいがみ合わず、健闘を称え合う。底に憎しみなど当然ない。これこそがスポーツの原点だ。

 小平は、日韓関係にいい意味でくさびを打ち込んだ。スポーツマンシップにのっとった彼女の純粋な行動に両国の国民が胸を打たれ、気付かされたに違いない。いがみ合ってばかりいるのが、何て愚かなことなんだと。そして友情とは何て素晴らしいものなんだろうと。いま一度、我々に日韓の関係性を考え直す機会を与えてくれた小平の素晴らしき行動も競技に加えて金メダルに匹敵するものだったと言える。

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