韓国のライバルにも、KYな質問にも。小平奈緒の“神対応”に、称賛の声赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)

» 2018年02月23日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]
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失礼な質問にも“神対応”

 それから、もう1つ。かなりスケールが小さくなってしまうが、レースが終わった直後の小平に対するインタビューも波紋を呼んだ。インタビューアーの石井大裕アナウンサー(TBS)が「闘争心あふれる、まさに獣のような滑りだったと思います」と口にしたことだ。「女性蔑視ではないか」といった批判がネット上を中心に相次ぎ、同アナが「常々、小平選手本人が、ヒョウだとかチーターだとかを超えた選手になりたいんだと話していました」と釈明に追われる騒動にまで発展してしまった。

 ロンドン五輪の柔道女子57キロ級金メダリスト、松本薫選手が、かつて「美獣」などと呼ばれて「獣」の文字が各メディアに躍っていた事実もあって「単なる揚げ足とりではないのか」と石井アナの発言をかばう声もある。ただ、このインタビューはあまりにも流れが悪く小平本人、そして中継を見ている視聴者を不快な気持ちにさせてしまったのは間違いないと思う。

 言葉の良し悪しはともかく、あの場で唐突にいくら本人がヒョウやチーターを意識していたとしても「獣」と発言するのは違和感がある。どうしても言いたいのであれば、せめて「ヒョウやチーターを超えた選手になりたいと常々、話していましたが」と注釈を付けるべきだった。

 また、石井アナはこのインタビュー中、小平に「コーチとの二人三脚で獲得した金メダル」と振ったものの、当人から「二人三脚ではなく、学生や同じチームの人たちが支えてくれた」とやんわりと否定されてしまっている。大変申し訳ないが、石井アナにはもう少し空気を読むチカラを身に付けてほしいと思わずにはいられない。

 こういう微妙な雰囲気で進められたインタビュー中にくだんの「獣発言」が飛び出すと、小平は苦笑いを浮かべつつも「獣かどうか分からないですけど、でも本当に躍動感あふれるレースができたかなと思います」と応えた。ムッとしてもおかしくなかったところでサラリと受け流したのも、小平の“神対応”だったと思う。

 大舞台で結果を出し、競技が終わっても狂喜乱舞することなく自分を見失わずに冷静沈着さを貫き名シーンを生み出した。そんな小平の偉業と精神は日本のスポーツ史に永遠に語り継がれていくことだろう。

マスコミのKYな質問にも神対応

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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